グループ経営改革とコア人材の育成

開催日 2002年10月29日
スピーカー 小河 光生 (IBMビジネスコンサルティングサービス(株) ディレクター)
モデレータ 細川 昌彦 (RIETI客員研究員/経済産業省貿易経済協力局貿易管理部部長)

議事録

司会
小河氏は、ピッツバーグ大学でMBAを取得後、三和総研等でコンサルタントを経て、IBMビジネスコンサルティングサービスのディレクターに就任されました。本日は、日本企業の組織変革は今後どのような方向にいくべきなのか、その中で、組織を担う人材育成、特に核になるコア人材をいかにして育成していくか、こうした点に焦点を当ててお話しいただきたいと思います。

グループ経営という点で企業が直面している問題

私は、持ち株会社のグループ経営を専門にしています。これは、7~8年前からずっと追いかけているテーマです。本日は、グループ経営という点で企業がどういった問題に直面しているのかを導入部にして、日本企業の中での人材にスポットを当てて考えたいと思います。

グループ経営というと、身近なテーマではないように感じるかもしれませんが、実はそうではありません。たとえば、扇風機を考えてみますと、今、扇風機は1台2000円を切る価格で売られています。しかも問題なく作動するのです。電機メーカーの人に聞いてみると、考えられない価格だといいます。日本で作っていては話にならない価格だというのです。家電の大半は中国や東南アジアで作られています。グローバル競争の中で総合電器メーカーはどうしているのでしょうか。日立は、家電部門を分社化に踏み切り、マネージメントや人事制度のやり方などを変えました。三洋電機は、中国のIRと提携し、相互乗り入れを始めました。このように抜本的な組織改革に踏み切っています。

それでは、分社化された会社を含めてグループ経営をどのようにしていけばいいのでしょうか。日本の子会社は、親会社の一機能であった営業・物流・販売を担ってきました。よって、親会社とは垂直的な関係にあります。親会社の成長がそのまま子会社に結びつきます。逆にいえば、親会社がこけると、子会社もこけるわけです。昨今の経済成長の下では、親会社は成長鈍化に陥っています。そうした中で、グループとしての成長をどのように求めていけばいいのでしょうか。

日本の会計制度は、親会社の単独決算中心の開示制度から連結決算へ移行しています。いかに、グループとしての経営を開示していくかがポイントになっています。つまりグループとしての経営をいかにしていくかが、今の日本企業が直面している問題点です。

今までの日本企業では、親会社中心の経営が行われてきました。子会社への出向は一方通行、片道切符であり、子会社に行ったまま、帰ってこられない状況も多くありました。たとえば、娘の結婚までは子会社への出向は待ってほしい、というように、親会社の肩書きが欲しいという気持も強いようです。子会社はまた、親会社の人材受け入れ会社であり、親会社は決算をよくするために、子会社の収益を持ってきたりしていました。しかし、これからは、垂直的な関係から水平的な関係にしていく必要があります。

親会社の中での経営資源配分は今までも行われてきました。しかし、グループ全体の中でヒト、モノ、カネを集める視点が今までは弱かったといえます。

ソニーグループを例にとると、この企業の組織図は、日本企業の中では大変まれです。カンパニーがソニー株式会社として法人格を持っています。しかし、カンパニーといえども、グループの中では一企業に過ぎないのです。連結経営に対する姿勢がうかがえます。親会社のヘッドクォーターではなく、グループのヘッドクォーターになっています。

2001年、連結ディスクロージャーが強化されました。子会社の実質基準が導入され、会社の分割が容易になりました。商法上規定がなかった会社分割が簡単にできるようになりました。2002年には、連結納税制度が導入され、グループ経営の素地が整ってきました。本社はグループの経営戦略を策定することに特化する存在になっています。

組織の発展形態

日本企業では分権化を進めるために、カンパニー制を採用する企業が増えています。カンパニー制は疑似分社とも呼ばれます。というのも、実際の分社は行わないものの、分社と同等の効果を狙うからです。持ち株会社は、カンパニー制よりもさらなる分権化を進めるため、実際に分社を行います。分社を行いつつも、グループとしての一体性を維持しようとしているのです。カンパニー制は過渡的な組織ではなく、持ち株会社と並列にとらえられる組織になってきました。その証として、ソニーは持ち株会社に移行しますということを言わなくなりました。カンパニー制は、ソニーが8年前に導入した仕組みです。今では、武田薬品もカンパニー制を採用し、分社化に踏み切りました。電車の中吊り広告を見ると、武田薬品の広告にはカンパニーの名称が記されています。東芝では、カンパニー独自の体系を月例給与にも反映させました。ボーナスに反映させることはありましたが、月例給与にも採用するのは初めてでした。しかも、その採用もカンパニー毎にやっていくことが考えられています。

持ち株会社は完全な分社化に踏み切り、法人格を持っているため、倒産が発生します。そのため、トップの経営責任が明確です。また、人事制度を千変万化に変えることができます。カンパニー制においては、このような持ち株会社のメリットがデメリットになることもあります。それは人の移動や組織の柔軟性が生まれにくい点です。

ソニーは持ち株会社に移行しない理由として、エレクトロニクス業界がこれからどうなるかわからないことをあげ、当面はカンパニー制でいく、と主張しています。今の日本企業の直面している状況は、マーケットの流動化です。持ち株会社にしてしまうと、次のシステムが来たときに対応しにくくなる。よって、カンパニー制という疑似分社の仕組みを取ろうと考えています。

現在、カンパニー制が進み、企業の部門の細分化が起こっていますが、それはまた、扇の要としての強力な持ち株会社機能が必要とされることをも意味しています。持ち株会社は投資家の立場で、一番儲かるところに投資をして、リターンを得ることを策定します。すべてのカンパニー、グループ会社に投資回収を行い、業務の執行権限をカンパニー、グループ会社に委譲し、持ち株会社はこれらの事業単位の最終損益を管理、監査することでグループ企業の価値を最大化することを狙います。持ち株会社とカンパニーの関係は、所有と執行の分離関係にたとえることができます。持ち株会社が所有で、カンパニーが執行というように、役割分担を明確にします。持ち株会社機能を補完する1つの仕組みとして求められているのが、経営情報の可視化です。

経営情報の可視化とは、ITの仕組みで、経営情報を吸い上げていくというものです。グループ会社にとって見れば、透明性、オープン化が重要です。雪印の例を挙げるまでもなく、都合の悪い情報は上まであがってきません。しかし、こういったことをやめないと、分権化は見えてこないのです。

グローバル競争の中で企業の組織をどんどん小さく割っていって、それに応じたマネージメントの仕組み、人事制度の仕組みに変えていかなければなりません。今は、このような状況にあります。

コア人材の育成

グループ経営の中で人材をどのように育成していくかが非常に大きな課題になっています。グループ経営の大きな流れの中で、コア人材の育成をどうしていくか、考えていきたいと思います。

これまでの日本企業は、親会社至上主義でした。親会社が主になって、単体の業績をよく見せようとしてきました。たとえば、子会社への人材出向は一方通行であり、親会社から子会社への出向は左遷のように思われました。しかし、こうした考えは時代遅れであり、グループを1つの企業に見立てて、やっていかなければならない、そのような時代がやってきました。組織はどんどん分権化していっています。

持ち株会社制をとろうと、カンパニー制をとろうと、分権化されていくわけですが、誰がマネージメントしていくのでしょうか。部長職ではありません。経営者になって小さな組織を回していかないといけないのです。だから、経営者ニーズが格段に高まってきています。

友人のベンチャーキャピタリスト曰く、投資したい企業はいくつもあるが、投資した後が問題というのです。それは、人材がいないことです。仕方なく内部から人材を登用していますが、外部からプロを連れてこないと、大きな成長が見込めません。ところが、日本企業はそういう教育を行ってきていません。経営者人材が不足しているのです。

その背景は、会社主導でキャリア形成が行われているからです。会社の都合で人材がローテーションされてきました。その結果、いろいろまわったものの、自分の専門分野は曖昧になります。そのようなキャリアのイメージが構築されてきました。

ところが、そのようなキャリアの積み方だと、経営者に必要なスキルとは何かといった観点からの訓練、教育がなされていません。グループ人事の観点から、グループ人材のあり方を考えてみます。まず、経営の現場を経験して、本社に帰ってきます。本社に帰ってきて、違った形でマネージメントする。一部の日本の先進的企業はグループ企業は経営者育成の場と位置づけています。

経営者人材を育てるに当たって、注意すべきは人材情報の管理の仕方です。どんなスキルがあるのか、どんな経験をしてきたのか、きちんとデータベースの中に管理されていなければなりません。今後のグループ経営では、有効な人材戦略が競争力を左右することはいうまでもありません。

たとえば、日立グループでは、「・・・スキル」と入力すると検索結果の一覧が瞬時に表示されるデータベースができています。これはかなり先進的な例です。たいていの日本企業では、親会社から子会社に出向した時点で人材情報は途絶えてしまいます。出向者の管理が出向先の登録までで、出向した先でどんなスキル、経験をつんだのかが分かりません。

とはいえ、先進的な日立でもスキルの数が1000あります。これでは、マネージメントできる状態ではありません。これは、資格をスキルの中に数えているからです。しかし、スキルはそういったものではなく、株式にかけては、右に出る者はいない、決算総期間を語らせたら右に出る者はいない、このようなことをいうのです。このような総合的なスキルをいかにデータベース化していくか、それが今後の課題です。新規事業を立ち上げる際には、データベースの中から、スキルを引き当てて、探していく。このような流れを作っていかなければなりません。

評価制度もこの流れに従って考えていかなければなりません。今までスキルとペイの間にはあまり相関関係がありませんでした。組織の大きさで決まってしまっていました。評価制度はグループ化のなかで変わらざるを得ないと思います。

ヘッドハンター曰く、ゴーン改革で有名な日産は日本で今、人を一番引き抜けない会社といいます。2・3年前、すなわちゴーン氏が日産に来る前、有能な日産社員は簡単にヘッドハントすることができたというのです。日産改革の要となったクロスファンクショナルチームはなぜ成功したのでしょうか。ゴーン氏曰く、リーダーシップが重要といいます。では、リーダーシップとは何なのでしょうか? それは、Motivate Others、他者をどれだけモチベートできるか、です。これをいかに評価するかが、日本企業には欠けています。

では、評価に当たっては、何を基準にすればいいのでしょうか。その際の指標が、バランスド・スコア・カードです。結果指標だけではなく、売り上げ、利益を上げるまでのプロセスを評価しよう、というものです。

それでは、どのように人材を育成していくのか、そこに焦点を当てます。

トヨタ自動車では、管理すべき重要ポストをグローバルベースで選別し、幹部人材の育成を計画的に行っています。グローバルな重要ポスト、200くらいをデータベース化しています。そしてまた、ポストに必要なスキルもデータベース化されています。この2つを組み合わせて、足りないスキルを研修させます。また、グループの中での優秀人材もデータベース化されます。本人には知らせないで、毎年、入れ替えています。どんな訓練をすれば、そのポストに必要なスキルが身につけられるのか、これが、科学的に関連付けられています。これまでは、属人的な知識で配置を決めていました。しかし、勘に頼るのではなく、科学的に行うことが求められます。

東レでは、5カ月の合宿研修があります。コーポレートユニバーシティという、企業の中で人材育成をするプログラムを作っています。合宿研修を卒業した人は2~3年、子会社で取締役レベルで活躍し、業績に応じて、本社に戻ってきます。それは、経営者としての自覚とスキルを身につけさせることに主眼が置かれています。

最後に、新しい人材マネジメントについて考えてみたいと思います。日本の産業はサービス業化しています。それでは、サービス業に求められる人材とはどのような人材なのでしょうか。製造業は中国のキャッチアップにより、競争力が落ちてきました。これからは、人材が価値の源泉になってきます。

文系大学生の就職人気ランキングの推移を見ると、ハイテクメーカーの人気が高まっています。一方、既成産業は、年によって、乱高下を繰り返しています。特に、95年以降は下落の一方です。これを見ると、ハイテクメーカーは人気が高く、既成産業は人気が急激に落ちていることが分かります。

日本の企業は人材育成に取り組めていません。一部の人材が集まる会社と逃げていく会社に分離してきています。そして、人材が集まる会社が競争力を持つ会社になってくると思います。昨年、厚生労働省の経営形成委員会の委員をさせていただきました。そこで、7・5・3の法則というのを議論しました。これは就職した人が就職後3年以内にやめる比率を中卒者、高卒者、大卒者の順番で表したものです。中卒では7割、高卒では5割、大卒では3割の人が就職後3年以内に職場を去っています。これは大変ゆゆしき事態だと考えます。黙っていても人の集まる会社は少子高齢化の中で、大変な競争力を持ってきます。人の集まる会社はなぜ集まるのか、そして、逃げる会社はなぜ逃げるのか、この点について冷静な分析が必要です。

IBMを例にとりながら、スキルの変化への対応について考えてみます。企業のサービス業化については、先に触れたとおりですが、1981年、IBMはパソコンを作って、お金を稼ぐ企業でした。しかし、99年には、売り上げの6割はサービスで稼ぐ会社へと変わりました。81年当時、40万人いた社員は8万人に減りました。人の入れ替わりが起こったのです。必要とされるスキルは当然変化しました。人材のポートフォリオを変えていかなければならないのです。こうした高いチャレンジは日本企業にも必要とされています。

サービス業におけるマネージメントのポイント

サービス業は、「もの」を売ることから「こと」を売ることへ変化しています。「もの」から「こと」へのシフトが進んでいます。たとえば、RV車に見られるように、単なる移動の手段から、エンターテイメントの要素も含んだものになっています。

サービス業にはどのような特徴があるのでしょうか。まず、サービス業においては、生産と消費が同時に行われるため、生産と販売を分けることができません。それから、お客さんの嗜好の変化に幅、多様性があることです。たとえば、フライトアテンダントがミスをして、お客さんにお茶をこぼしたとします。そして、その後、フライトアテンダントが誠意を持って謝罪し、対応すると、それが評価につながる場合もあります。

自己実現の志向も見逃せません。通信教育会社にベネッセという企業があります。採点者はアウトソーシングです。結婚して、仕事をやめた家庭の主婦が、社会との接点を持ちたい、何とか社会の中で自己実現したいと思って働いているのです。彼らは自発的です。上司が言うからとか、マニュアルにあるからやるのではないのです。だから、強制するとかえって辞めてしまいます。ここが自己実現志向に対応する難しさだと思います。

また、成果の評価は定量的に量りにくく、量よりも質が求められています。

サービス業の場合は、現場が一番客のことを知っています。だから無理に指導しようとしてもだめです。自己主張の激しい人材をマネージメントしていかないといけません。内容を管理するのではなく、マイルストーンを管理していくのです。上司と部下の関係ではなく、リーダーとプレーヤーの関係、いってみれば、役割分担の関係です。廊下で呼び止めて一緒に話をしていく関係、そんなイメージです。

ポイントは、スキルに対してペイしていくことです。ペイ・フォー・リスポンシビリティという概念が求められます。また、網羅性のある正確な評価が必要です。評価のメッシュを細かくするのではなく、仕事が自己実現を担っている以上、納得性のある評価をすることです。ナレッジワーカーは自己実現できるのが仕事だと考えています。評価に納得すれば、仕事にさらなる精を出します。

時代状況、経済状況に応じて、求められるスキルは変化してきます。その時々において、スキルを再構築していくことが求められます。

スキルを学習する際のポイントは、双方向で学習する組織、ラーニングオーガニゼーションを作っていくことです。学習する組織には2つの要素が必要です。1つは、インフラが整っていること。思い立ったらすぐできることは大事なポイントです。もう1つは、学習した後にいいことがある、ということです。目標とリターンがあることが重要です。何になりたいのか、なったらどんないいことがあるのか、明確である必要があります。

質疑応答

Q:

コーポレート・ユニバーシティ(企業内大学)がブームになっています。ある意味ではポジティブに評価できます。経営者の育成は緊急の課題です。経営者の国際競争力のなさは日本企業のネックになっています。危機感はポジティブに評価したいと思う反面、制度設計の中身を見ると、多くの企業が類似している印象を持ちます。流行を追い求める横並びが起こっていないでしょうか。私はこれを危惧しています。それについてどのようにお考えでしょうか。もう1つは、企業内大学は、組織の中でどう人材養成をしていくのかというインハウスのシステムと、ビジネススクールに派遣するという人材養成のアウトソーシング、2つのシステムをどう住み分けて、どうベストミックスを作り上げていくといいのでしょうか。

A:

経営者人材の育成は画一化され、横並び現象が起こっています。その最たるものが人材育成が人事部の仕事となっていることです。そうではなく、何を以て、誰を以てコアとするのか、その基準は何なのかを明確に示すことです。これは、経営そのものだと考えます。わが社としてどういう方向にいくのかという方向性がないと、コアも見えてきません。中でやる人材育成と外でやる人材育成をしっかり考える必要があります。GEやIBMでは企業内育成を大事にしています。企業哲学や経営者の持っている思いはアウトソーシングでは伝えることができません。たとえば、ソニーは開拓者であり、絶対物まねはやらないというビジョンは、ソニーの中でないと伝えることができません。これを出井さんが直接やっています。では、アウトソーシングをどう考えるか。今までは親会社の中でいかに部課長を教育していくか、が中心でした。しかし、これからはグループの中で人材育成をどうしていくか、がポイントです。鉄道会社は、定時運行、安全運行を至上命題としています。それはもっとも大事なことなのですが、いってみれば保守的です。鉄道会社はグループで見ると、ホテル事業もやっていて、駅前には鉄道会社の名を冠したホテルがあります。そして、ホテル事業はグローバル競争に直面していて、ホテル経営のために外国人を呼んでいます。異文化、異業種をどうマネージメントしていけばいいのでしょうか。ビジネススクールなどのアウトソースは、スキルを後天的に身につけることができます。先達がありますし、効率よく学ぶことができます。

Q:

人を評価することは難しいと思います。言うは易く、行なうは難しです。特に納得性のある評価は具体論になると難しいのではないでしょうか。

A:

弊社(IBCS)の評価は、一次評価には上司がタッチしません。本人が評価者を選んで評価をしてもらいます。二次評価は、パネルを組み、本人を全く知らない人が評価、パネルします。何人もコーチが集まって、コーチが代弁者となり、上司に評価の報告をします。コーチと本人は常にコミュニケーションをとらなければなりません。そうすると、社内のコミュニケーションも活発になります。メッシュを細かくして評価するのではなく、運用部分でどのように納得性を出すのか。これが、自己実現につながります。

Q:

そうはいっても、満足度、達成率など、数値化できる要素も多いのではないでしょうか?

A:

数値化できるものを重視しています。それは、客観性が必要になるからです。

Q:

自己実現と競争意識のミッションは、どのように整合性をとることができるのでしょうか。

A:

ポイントはペイフォースキルだと思います。スキルは何々の資格を持っているかどうかではありません。業績の中でいかにスキルを発揮できたかを見るのです。必ずしもスキルだけでは評価は成り立ちません。スキル以外の部分でも、Recognition Processがあります。写真が貼り出され、賞賛される仕組みです。自己実現と競争意識のミッションは相反する存在ではないと思います。

Q:

努力したけれども、その人に責めを負わせることのできない外的要因はどうするのでしょうか?

A:

弊社では結果に対してのインセンティブは3割、あとはボーナスで支払われます。残りの7割はスキルに対しての支払いです。スキルは短期志向ではありません。3~4年のスパンで身につけるものです。ただ、結果に結びつかなかった努力は見ません。7対3というのを組織形態の中で、どう運用していけば効果的でしょうか。スキルやナレッジを貯めていく、マトリックス型の組織が必要だと考えます。

Q:

コーチは個人のスキルアップの代弁者であり、上司は組織目的の代弁者だとすると、経営者はいろいろとやることが増えるのではないでしょうか。

A:

スキルは勝手気ままに定めているのではありません。経営者の責務は企業のビジョンを描くことです。そうでなければ、スキルチェンジはできません。スキルチェンジを促すためには、経営者が重要だと思います。

Q:

組織論についてですが、持ち株会社とカンパニー制は、本当は持ち株会社の方がいいのではないでしょうか。

A:

持ち株会社かカンパニー制かという問題は、時々の状況に応じて、変えていけばいいと思います。持ち株会社は法人格を持ちます。よって、人材の流動性は持ち株会社では難しいのです。今はマーケットがどう動くかわからないのでカンパニー制でしのいでいくのが賢明だと思います。

Q:

優秀な経営人材、優秀な人がコンサルタントになってしまっています。MBAが優秀と仮定すれば、当社では200人いても100人以下に減ってしまうのです。これをどうお考えになりますか。

A:

当社は毎年200人程新卒採用をしています。学歴的に立派な人はたしかに入っています。自分が何年後かにこういうスキルを身につけたいという目標に対して、コンサルタント会社は非常にクリアなのだと思います。若い人は、大企業に入ってリストラされるということに不安があります。いかに自分をスキル・フルな人間にするかを考えています。

Q:

優秀なコンサルタントは優秀な経営者になれるのですか?

A:

トレーニングにはいいかもしれませんが、必ずしもそうではないと思います。コンサルタントと経営者は根本的にタイプが違うと思います。コンサルタントはロジックで動きますが、経営者には魂を揺さぶる何かがあります。

Q:

コア人材のシステムが横並びではないでしょうか。必要に迫られてやっている感があります。そして、スキル偏重のきらいもあります。コア人材の意識を持つといったことと、経営者を育てるということはどう両立するのでしょうか。ジャックウェルチの例もありますが、スキルだけに偏重したプログラムではありません。日本型のプログラムで各社進歩していくのではないでしょうか。スキルの育成と経営能力の育成はどのようにマッチさせていくのでしょうか。

A:

あなたは将来の経営者人材です、とIBMは経営者人材を名指しします。しかし、トヨタはそうではありません。IBMのような仕組みは、日本に合うでしょうか。日本式のコア人材の処遇の仕方があるはずです。若いうちから子会社に出て、責任感の持ち方や、全体の中でものをみる視座などを獲得しないと経営者人材になれないと思います。

Q:

経営者が市場で取引されることをどうお考えになりますか。

A:

そのようなマーケットを作っていかなければならないと思います。職員の意識改革をやっていかないといけません。成果主義を問うのであれば、社内で自分の就きたいポストを公募するのです。日本で部下が手を上げれば、俺のところが嫌なのか、と上司は怒ります。右肩上がりのときにクライシスを自覚すれば、職員も変わります。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。