中国経済新論:実事求是

2018年の中国経済の展望

関志雄 経済産業研究所

2018年の中国経済は、過剰生産能力の削減に伴う投資抑制、住宅市場の調整、「政治的景気循環」に沿ったインフラ投資の鈍化、リスク回避のための金融政策の引き締め基調の維持を受けて、成長率が低下すると予想される。今後、中高速成長を維持するために、市場化を軸とする改革開放を深めていかなければならないが、その内容は2018年秋の中国共産党第19期中央委員会第三回全体会議で明らかになるだろう。

予想される成長率の低下

中国は供給側構造改革の一環として、鉄鋼や石炭など、一部の産業における過剰生産能力の削減に取り組んでおり、成果を上げつつある。これを受けて、企業の新規投資がやがて再開され、中国経済が景気循環の次の上昇局面に入るだろうという「ニュー・サイクル」(中国語は「新周期」)の議論は盛んになっている。しかし、産業の中心が工業からサービス業に移りつつあり、過剰生産能力が深刻になっている産業では、需要がすでに歴史的ピークを越え、縮小に向かう段階に来ていることを考えれば、投資の力強い回復は見込まれない。

その上、住宅市場の調整も景気に水を差すだろう。北京や上海といった一級都市の住宅価格は高騰し、年収倍率がすでにバブル期の東京を上回っている。政府はすでに住宅ローンと購入資格への制限強化などの抑制策を打ち出しており、住宅販売面積、住宅販売価格、住宅開発投資の伸びが相次いで鈍化に転じている(図1)。住宅市場の調整色は、2018年に入ってから一層強まるだろう。しかし、急激な住宅価格の低下は、住宅投資の減少を通じて景気を悪化させるだけでなく、1990年代以降バブルが崩壊してからの日本のように、銀行の不良債権の増加を通じて、金融システムの不安定化を招きかねない。

図1 住宅市場の主要指標の推移
図1 住宅市場の主要指標の推移
(注)住宅販売価格は70大中都市の単純平均で、2010年12月までは新築住宅販売価格指数、2011年1月からは新築商品住宅販売価格指数。住宅販売面積は商品住宅。住宅販売面積と住宅開発投資の各年の1月と2月のデータは2カ月まとめた形でしか発表されないため、図の作成に当たり、同じ計数を使用した。
(出所)CEICデータベース(原データは中国国家統計局)より筆者作成

さらに、中国では、中国共産党全国代表大会(党大会)が開催される年に成長率がピークに達するという景気の5年サイクル(いわゆる「政治的景気循環」)が見られる。これは、五ヵ年計画に盛り込まれているインフラ建設などの大型投資案件の実施が、党大会の年に集中する傾向が強いからであると説明されている。実際、中国の成長率は1981年から2015年まで平均9.8%だったが、党大会が開催される年は平均10.8%と高くなり、「党大会+1年」は同10.2%、「党大会+2年」は同9.6%、「党大会+3年」は同9.4%、「党大会-1年」(つまり、次の党大会の前の年)は同9.1%へと低下するというパターンが観測されている(図2)。第19回党大会が開催された2017年においても、第1〜3四半期の成長率は前年比6.9%に達しており、通年でも前年の6.7%を上回ると見られる。この経験則は、党大会の翌年に当たる2018年の成長率が低下する可能性が高いことを示唆している。

図2 共産党大会と連動する中国の景気循環
図2 共産党大会と連動する中国の景気循環
(注)実質GDP成長率。太線は該当年の平均(対象期間は1981年〜2015年)。例えば、党大会の年は、1982年、1987年、1992年、1997年、2002年、2007年、2012年の平均。細線は2016年以降の各年の値。なお、党大会は5年毎に開催される。
(出所)中国国家統計局より筆者作成

金融引き締めによるリスクの防止

2008年のリーマン・ショック以降、中国において企業を中心とする各部門の債務が急増しており、IMFやBISをはじめとする国際機関からは、景気の減速に伴う銀行が抱える不良債権の拡大が経済危機の引き金になるのではないか、という懸念の声が上がっている。中国政府も、2018年の経済政策の方針を決める「中央経済工作会議」(2017年12月18〜20日に開催)において、金融をはじめとする重大リスクの防止とコントロールを、貧困撲滅と汚染対策とともに、今後3年間の「三大攻略戦」の一つとして位置づけている(表1)。これにより、マクロ経済政策の目標における成長と安定というトレードオフにおいて、後者にウェイトを置くという政府のスタンスが鮮明になった。

表1:2017年の中央経済工作会議で示された今後3年間の「三大攻略戦」
重大リスクの防止とコントロール
重点は金融リスクの予防にあり、供給側構造改革という方針に沿って、金融と実体経済、金融と不動産、金融システム内部の良好な循環の形成を促進し、重点分野でのリスクの予防と対処をしっかりと行い、違法・ルール違反の金融活動を断固として摘発し、弱い部分を監督・管理する制度の構築を強化する。
貧困撲滅
現行の基準の下での貧困撲滅の質を保障し、特定の貧困層に照準を合わせて精確に扶助を行い、貧困問題が特に深刻である地域に焦点を合わせて力を入れ、貧困人口の自助努力を促し、政策実施への評価と監督を強化する。
汚染対策
汚染物質の排出量を減らし、生態環境を全体的に改善する。重点は青い空を守り、産業構造を調整し、後れた生産能力を淘汰し、エネルギー構造を調整し、省エネルギーの高い目標を定め、その実績を厳しく評価し、輸送構造を調整することにある。
(出所)新華社「2017年中央経済工作会議公報」、2017年12月20日より筆者作成

実際、当局は、金融政策を策定する際、これまで主に物価の変動に象徴される「景気サイクル」の抑制に重点を置いていたが、近年は、不動産価格の変動に象徴される「金融サイクル」の抑制も考慮するようになった(中国人民銀行、「中国貨幣政策執行報告」2017年第3四半期、2017年11月17日)。これを反映して、CPIで見たインフレ率は低水準(2017年11月には前年比1.7%)にとどまっているにもかかわらず、マネーサプライM2の伸び鈍化とSHIBOR(上海銀行間取引金利)の急上昇が示しているように、金融政策の基調は極めてタイトになっている(図3)。また、住宅販売価格は、上昇が一段落しているとはいえ、依然として極めて高い水準にある。そのため、金融政策の引き締め基調は2018年にも引き続き維持されると予想される。

図3 M2とSHIBORの推移
図3 M2とSHIBORの推移
(出所)CEICデータベース(原データは中国人民銀行)より筆者作成

以上をまとめて考えると、2018年の中国経済は、投資によって牽引されるニュー・サイクルの上昇局面よりも、投資の減速による調整局面になると予想され、成長率が2017年の6.8%(推計)から6%台の前半へと減速するだろう。

2018年秋に開催される三中全会に注目

中国では、労働力が過剰から不足に転じていることを背景に、潜在成長率が低下しており、今後、中高速成長を維持するためには、生産性の向上がカギとなる。それに向けて、過剰生産能力の削減を中心とする供給側構造改革にとどまらず、市場化を軸とする改革開放を深めていかなければならないが、習近平総書記は、2017年10月に開催された党大会における報告において、次の六つの経済改革の課題を挙げている。
①供給側構造改革の深化
②イノベーション型国家の建設の加速
③農村振興戦略の実施
④地域間の調和的発展戦略の実施
⑤社会主義市場経済体制の整備の加速
⑥全面的な開放の新たな枠組みづくりの推進

これらの経済改革のより具体的内容は、2018年秋の中国共産党第19期中央委員会第三回全体会議(三中全会)において発表される予定である。

2013年秋に開催された第18期三中全会においては、「市場に資源配分における決定的役割を担わせる」ことが訴えられるなど、市場化改革を推進しようとする指導部の決意がうかがわれた。しかし、振り返ってみると、2012年に発足した一期目の習近平政権において、市場化改革は総じて停滞していたと言わざるを得ない。今度の三中全会は、市場化改革が加速するきっかけになるかに注目したい。

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2018年1月9日掲載