中国は貿易大国として急速に浮上している。2004年の中国の輸出入総額は前年比35.7%増の1兆1547億ドルに達した。その結果、中国は輸出入ともに日本を上回るようになり、米国とドイツに次ぐ世界第三位の貿易大国となった。中国の躍進を背景に、日本の対中貿易依存度が急速に高まっているが、これに対して、世界経済における日本の存在感が薄れる中、中国から見た日本の重要性はむしろ相対的に低下している(図)。
日中両国の間では政治関係が冷えているにもかかわらず、日本の対中貿易が好調を続けている。財務省が発表した2004年の貿易統計速報によると、日本の対中国・香港の輸出と輸入を合わせた貿易総額の全体に占める割合が20.1%にのぼり、初めて米国(18.6%)を上回った。日本の貿易のチャイナシフトは今後も予想され、早ければ今年中にも、香港を含まないベースでも中国が米国を抜いて日本の最大の貿易相手国になる。
しかし、この日本からは熱く見える日中貿易関係も、中国からはぬるくしか見えない。2004年、中国の対日貿易の伸び率(25.7%)は対世界(35.7%、そのうち、対EUは33.6%、対米国は34.3%、対韓国は42.5%)に比較して低くなっている。しかも、この傾向は最近になって始まったものではなく、90年代後半以来、中国の対外貿易全体に占める対日貿易の割合が低下の一途を辿っている。日本はこれまで中国の最大の貿易相手国だったが、2004年にはEUや米国に抜かれ第三位に落ちてしまった。
このように、日本側の統計が日本経済のチャイナシフトをはっきり示しているにもかかわらず、中国側の統計は中国経済の日本離れを示唆している。この非対称性は、主に中国経済の躍進と日本経済の不振を反映している。中国の生産基地と最終製品の市場としての規模拡大をビジネスチャンスと捉えるべく、世界各国が対中貿易を増やしている。日本から見ると、対中貿易は他の地域に比べて高い伸びを示しているものの、中国の貿易全体の拡大ペースには及ばないため、中国から見た日本の地位が相対的に低下してしまったのである。実際、日本経済がバブル崩壊を経て長期不況に入ったことを背景に、中国に限らず、ほとんどの国にとって貿易相手国としての日本の重要性が低下してきた。
日中の経済関係がすでに冷めていることは、「貿易依存度」から相手国の世界貿易に占めるシェアという規模要因を除いた「貿易結合度」の推移を見れば、いっそう明らかになる。ここでいう貿易結合度は次のように定義される。
この式にしたがって、中国の対日貿易結合度と日本の対中貿易結合度とを計算すると、いずれも90年代後半以来低下傾向にあることが分かる(注)。このことは、中国の対日貿易依存度が日本の世界貿易シェアの縮小を上回るペースで低下している一方、日本の対中貿易依存度が高まっているとはいえ、中国の世界貿易に占めるシェアの拡大のペースには及ばないことを意味する(表)。冷たい政治関係がすでに経済関係に悪影響を与えているせいなのか、これまでの貿易結合度の変化から判断すると、中国経済の日本離れが進んでいるだけでなく、日本が他の国と比べて疾走する「中国特急」に乗り遅れているといえる。
2005年2月18日掲載