| 執筆者 | 髙嵜 直子(アンダーソン・毛利・友常法律事務所) |
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| 発行日/NO. | 2026年10月 26-P-022 |
| 研究プロジェクト | 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第VII期) |
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概要
本稿は、標準必須特許(SEP)をめぐる紛争の中で中国が発出した禁訴令(Anti-Suit Injunction: ASI)とその政策について、TRIPS協定整合性が争われたWTO紛争DS611を検討対象とする。EUは、中国によるASI政策が他の加盟国における特許権等の行使を制約するとし、TRIPS協定整合性を争った。パネルは、TRIPS協定1.1条1文を国内法の整備を求める規定と理解し、権利の行使可能性が国内法上確保されている限り協定違反は認められないと判断した。他方、MPIAは、同条の論理的帰結として、他の加盟国における知的財産権の保護・執行を阻害しないことが求められると解し、中国のASI政策が他の加盟国における特許権の実効的な行使を阻害するなどとして、28.1条および28.2条との不整合を認めた。本稿は、これらの解釈・判断を比較し、1.1条1文に関するMPIAの解釈とその限界を検討する。そして、SEP・FRAND紛争という状況下で、TRIPS協定上の権利の実効的行使を問題としたことを明らかにするとともに、28.2条に関して、FRAND交渉環境まで保護対象としたことについても検討する。