執筆者 | 熊谷 惇也(福岡大学)/馬奈木 俊介(ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2024年2月 24-P-001 |
研究プロジェクト | ウェルビーイング社会実現のための制度設計 |
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概要
本稿では、ウェルビーイング指標の政策利用という文脈における近年の研究の主張をレビューしたうえで、各種のウェルビーイング指標が持つ有用性と懸念点の両方を要約する。まず、ウェルビーイングを測定するための各種アプローチとして、SWB指標、OECD Better Life Index (BLI)、将来世代のウェルビーイングを維持することを目的とした新国富指標 (IWI)、表明選好法による各側面の重要度の推定手法についてレビューし、これら各指標の特徴や利点を整理する。そのうえで、効用とSWBに乖離が存在すると主張する近年の研究結果をもとに、SWBを人々の豊かさの指標として用いる際の手法的・規範的な懸念を指摘し、その指摘に対する対処方法を紹介する。さらに、自己申告の主観的回答から導かれる満足度の指標が、どのような分野において客観的水準と強く関連しているかを、データ分析を通して検証する。これらのレビューに基づく知見およびデータによる検証結果を踏まえ、ウェルビーイング指標が持つ懸念を明らかにし、それらの実務的対処法を提示することで、ウェルビーイングを政策利用していく上での現実的な指針を提供する。