大規模半導体工場の立地/増設のニュースが地元の労働需給へ与える影響

本論文では、日本における大規模半導体工場の立地/増設のニュースが地元の労働市場の需給、特に新規求人倍率へ与える影響を月次の都道府県パネルデータを用い、Difference-in-Difference（DiD）による因果推論の枠組みで調べている。DiDを用いた分析の結果、大規模半導体工場立地/増設のニュースは地元の新規求人倍率を0.05pt-0.08pt程度有意に上昇させることが確認された。また、企業の立地選択から生じる内生性の問題に答えるために、大規模であるものの処置群に比べれば比較的投資額が小さいが半導体工場の立地/増設に関するニュースが発表された他県をコントロール群としたマッチングDiDによる分析を行ったところ、同様の結果が得られた。さらに、処置のタイミングが異なるTWFE（Two-Way Fixed Effect, またはStaggered DiD）分析においては、処置効果の異質性がある場合、バイアスが生じることが指摘されているが、このバイアスの問題を克服するDiD手法の一種であるCS-DiDによる分析においても同様の結果が得られた。本分析は、政府のEBPMにおけるアジャイル型政策形成・評価に資するものとして位置づけられ、進行中の当該プロジェクトに対し一定の評価をするものである。