執筆者 | 山下 一仁(上席研究員(特任)) |
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発行日/NO. | 2023年7月 23-P-013 |
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概要
我が国で起こる食料危機は、穀物等の価格高騰で買えなくなる場合ではなく、シーレーンが破壊されることにより、食料への物理的なアクセスが困難となる輸入途絶という事態である。しかし、「中間とりまとめ」は、このときどれだけの食料が必要なのかを提示していない。これがないと、どれだけ農業生産を拡大しなければならないのか、そのために必要となる農地資源、肥料等の生産要素、穀物備蓄の規模などを検討できない。また、農業だけではなく、農業資材の供給、加工、貯蔵、流通など他のサプライ・チェーンのために十分なエネルギー等が確保されなければ、国民へ食料を供給できない。さらに、危機が生じた際の初期的対応、危機が長期化した際の対応など、危機のシナリオに応じて採るべき対応は異なる。
これまで農業界は、食料安全保障や食料自給率向上を農業保護の獲得のために利用してきた。このため、米の減反や農地の転用など、食料安全保障に反することが行われてきた。国民への食料供給という観点から、食料安全保障を再構築すべきである。