食料・農業・農村基本法の適正な見直し:食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会「中間とりまとめ」の問題点(2)農村・環境編

執筆者 山下 一仁(上席研究員(特任))
発行日/NO. 2023年7月  23-P-012
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概要

工場の地方分散というかつて機能した地域振興政策が機能しなくなっている。サービス産業による地域振興は、人口の少ない地方には向かない。他方で、米など土地利用型農業では、規模が大きい効率的な農業を実現しようとすれば、農業従事者数を減少させなければならない。自治体行政は、地方拠点都市における人口の集中、周辺のコンパクトシティにおける医療や生活施設の整備、農村地域での少数の農業者による大規模農業の展開などを広域的に調整する役割を果たすべきである。

農地資源の維持管理については、地域の中でその費用をねん出できるようにしなければ、永続的なものとはならない。減反を廃止して米価を下げる一方、主業農家に直接支払いを与えれば、主業農家の規模が拡大し収益が上がるので、農地の維持管理を行う地主が受け取る地代も上昇する。

化学肥料・農薬を低減し、環境にやさしい農業を実現するためにも、主業農家主体の農業が望ましい。“produce more with less”を実現するためには、ゲノム編集などを活用した品種改良に真剣に取り組む必要がある。