食料・農業・農村基本法の適正な見直し:食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会「中間とりまとめ」の問題点(1)食料・農業編

執筆者 山下 一仁(上席研究員(特任))
発行日/NO. 2023年7月  23-P-011
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概要

食料・農業・農村基本法見直しについての食料・農業・農村政策審議会の「中間とりまとめ」は、同法の構造改革を、価格支持による農家保護、農家丸抱えという1960年代から80年代にかけて政策に戻そうとしている。

輸入リスクが高まったとしているが、高い国産品を負担している国民が輸入品を買い負けることはない。“適正な価格形成”を主張し農産物価格を上げることは、貧しい消費者を圧迫する。輸出増進にも反するし、今後の通商交渉を困難にする。「直接支払い」なら、農業の持続性も消費者への安価な食料供給も実現できる。

米の生産調整(減反)は、水田の多面的機能と危機時の食料供給を損なっている。高額の納税者負担を行って供給を減らし消費者負担を高めるという、他に例を見ない政策は見直されない。

零細な兼業農家も農業の担い手に位置付けようとするが、主業農家に農地を集積して大きな所得を上げてもらい、元兼業農家の地主が地代を受け取って農地、水路、農道などの維持管理を行うことは、農村社会の維持に適う。

農林水産省の政策があまりに雑多で複雑なため、自治体の職員や農業者の創意工夫を阻害している。同省の各種事業の統合整理、簡素化、スリム化が必要である。