「産業政策論」再考―昨今の議論も踏まえて―

執筆者 安橋 正人(コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2022年7月  22-P-016
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概要

本論考では、産業政策の実務的観点も意識しながら、昨今の「産業政策論」をアカデミアの立場で再考することを試みる。2008年の世界金融危機以後に各国で産業政策の役割が見直され、政府の範囲が拡大される形で産業政策が展開されている。これに合わせて、アカデミアにおいても産業政策への期待が高まり、役割として市場の失敗の修正を基本としつつ、その定義される範囲も幅広い経済社会課題への対応まで含まれるようになっていることが明らかにされる。本論考では、経済学における産業政策の伝統的な理論的根拠やそれへの理論的批判を取り上げた上で、近年発展著しい「証拠に基づく政策立案」(EBPM)の観点から、日本を対象にした主な産業政策の実証研究をレビューする。また、「新しい産業政策」を提唱する論者の主張にも着目し、市場の失敗の修正を超えて市場の創造や形成なども主張する「ミッション指向アプローチ」の産業政策も詳しく検討する。最後に、現実の産業政策の履行実態も踏まえた上で、アカデミアとしての「産業政策論」の課題と展望についても議論する。