執筆者 | 佐野 智樹(コンサルティングフェロー) |
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発行日/NO. | 2022年5月 22-P-012 |
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概要
本稿では、日米の資本・労働のコスト及びストックのデータを用いて、要素価格比及び生産活動に投じられる資本・労働比率の推移を分析した。理論上、効率的な生産者は等量生産において費用を最小化すべく、資本・労働の要素価格比に応じて生産活動に投入する資源の比率を決定するが、日米両国における要素価格比及び資本・労働比率の推移が上記理論に符合するかを検証する。分析の結果、1990年代の日本及び2000年代の米国については理論が示唆するとおり、資本価格の相対的下落と資本比率の上昇が同時に見られたものの、2000年代以降の日本及び2010年代の米国についてはその傾向が後退し、資本価格の低下が必ずしも投資を喚起しない結果となっている。これは、生産要素の選択に関する経済学理論の前提が当てはまらないことを示唆しており、本稿はその要因として期待成長率の低下、雇用の柔軟性向上及び投資の不可逆性、労働増大的な技術進歩の可能性を指摘する。