執筆者 | 戒能 一成 (研究員) |
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発行日/NO. | 2021年1月 21-P-002 |
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概要
近年注目を集めている処置効果手法の1つに不連続回帰分析(RDD)があるが、これは非常に特殊な性質を持った評価手法であり、適用に際しての前提条件や結果解釈における留意点などが他の評価手法とは大きく異なっている。現状でこうした点が一般に理解されているとは言難く、政策評価への応用において問題を抱えた事例が散見される。
本研究においては、RDDに関する主要な先行研究を基礎として、RDDを政策評価の手法として用いる際の前提条件、手法としての限界と結果の解釈における留意点につき説明する。
具体的には、RDDの応用における限界の多くがその横断面分析性・局所平均処置効果評価性に起因していることを示す。また、こうした限界と前提条件に関連して変数の相対指標性への脆弱性、試料の秘匿・欠測への脆弱性、処置の従属性・内生性への脆弱性、「遵守者」の不均一な分布への脆弱性、処置の二次的影響による偏差への脆弱性など結果解釈における留意点について具体例を用いて議論する。更にこれらの問題に対処するための幾つかの方法や新たな方向性について紹介する。
本研究はこうした議論を通じて、RDDの政策評価への応用を支援し、手法としての発展に寄与しようとするものである。