新型コロナウイルスのパンデミックがもたらす政治・経済への影響

執筆者 藤 和彦 (上席研究員)
発行日/NO. 2020年12月  20-P-032
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概要

新型コロナウイルスのパンデミックは、日本を始め世界の人々の死に対する認識に変化をもたらしている。社会心理学は「人間は死を意識するようになると、自らが有する価値観に忠実な行動をとるようになり、その結果社会の混乱が生じる」としているが、このことがコロナ禍における世界の政治・社会の混乱の真の原因ではないだろうか。コロナ禍を契機に激化した米中対立やBLM運動を始めとする欧米社会の混乱が続けば、感染対策の影響で失速気味となっている経済は一層ダメージを受ける可能性がある。人類は何度もパンデミックを経験しており、重要な役割を演じてきたのは宗教だったが、今回のコロナ禍での宗教の存在感は皆無に等しい。コロナ禍の経験を踏まえ「新しい日常」が議論されているが、コロナ禍で多死社会化がもたらす変化が加速化している日本では、新たな社会や経済の仕組みを考えていく際に、人々の価値観の変化も視野に入れた考察が必要である。