戦前期日本のイノベーション活動:特許情報の電子化によるアプローチ

執筆者 井上 寛康 (兵庫県立大学)/岡崎 哲二 (東京大学)/齊藤 有希子 (上席研究員(特任))/中島 賢太郎 (一橋大学)
発行日/NO. 2020年4月  20-P-012
研究プロジェクト 組織間のネットワークダイナミクスと企業のライフサイクル
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概要

日本の近代化の過程におけるイノベーションのあり方、役割について、特許情報から把握するため、我々は1910年から1945年にかけての特許書誌情報の電子化を行うことで、戦前期特許書誌情報データベースの構築を行っている。本稿では、データベース構築の方法を説明し、作成したデータベースを用いた記述的分析を、特に当時のイノベーション活動の地理的分布および共同研究関係の観点から行った。得られた結果は以下の通りである。まず、特許出願数は1910年より既に大都市に強く集積しており、特に東京に一極集中していたことがわかった。さらに、より技術水準の高い技術分類に属する特許ほどより地理的に集積していたことがわかった。共同研究の数は近年に比べて少ないが、1特許あたりの平均発明者数は1.1人から1.5人と期間を通じて増加している。外国人による特許出願の平均発明者数は日本より多く、同様に1特許あたりの平均発明者数は期間を通じて増加している。共同研究による特許発明がこの期間に進んだことがわかる。