個人の貿易政策選好に関するミクロデータ分析―RIETI一万人調査による研究の概要―

執筆者 冨浦 英一 (ファカルティフェロー)/伊藤 萬里 (リサーチアソシエイト)/椋 寛 (学習院大学)/若杉 隆平 (シニアアドバイザー)
発行日/NO. 2020年2月  20-P-006
研究プロジェクト デジタル経済における企業のグローバル行動に関する実証分析
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概要

貿易政策、特に輸入自由化を巡っては国論が割れることが多い。経済理論も、貿易によって損失を被るグループが国内に存在することを示している。実際に、近年、保護主義は力を増しているように見える。そこで、わが国の1万分の1の「縮図」を得るべく1万人を対象としてサーベイを実施し、その個人レベルのミクロデータを用いて、個人特性と貿易政策選好の統計的関係を分析した。本論文では、一連の研究成果を概観し、その政策的インプリケーションを議論する。従来の研究でも知見が蓄積している産業、職業、教育のみならず、行動経済学的バイアス(リスク回避、保有効果=現状維持バイアス)が輸入自由化に対する賛否に有意な影響を与えていることが分かった。また、高齢化や地域特性の影響も無視できない。グローバリゼーションへの国民的支持を広げるためには、所得補償や保険機能の強化にとどまらず、高齢化や地域コミュニティに応じたきめ細かい対応、選択に際し国民に提示する政策メニューのデザイン、さらに長期的には高等教育の充実など、広範な取組みが重要であることが示唆される。