「事業者目線での行政手続コスト削減」について

執筆者 石崎 隆 (上席研究員)
発行日/NO. 2019年12月  19-P-033
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概要

規制改革推進会議(行政手続部会)は、2017年3月、事業者の行政手続コスト(申請書作成や行政窓口との往復等に要する作業時間)について、「2020年3月までの3年間で20%以上削減」するとの数値目標を決定した。このような数値目標を掲げた行政手続の削減は、欧州各国においては、Better Regulationの流れの中で2000年代から取り組んでいるが、我が国としては初めての取組である。

事業者の行政手続コストは年間3億3千万時間(8200億円)と計測されたが、上記の削減目標が達成すれば、年間7千万時間(1800億円)のコスト削減が見込まれる。最近では先進的な自治体も行政手続コスト削減に取り組みつつあるが、仮に、都道府県が全て20%削減に取組んだ場合は、更に年間1億7千万時間(4500億円)のコスト削減が可能と試算される。国と自治体が連携して、行政手続コストに取組むことが重要である。

行政手続コスト削減を実現するためには、単に行政手続をデジタル化するだけでなく、オンライン「利用率」の向上を図るための措置(ID・パスワード方式による簡易な本人確認、自治体毎に異なる申請項目の標準化等)が必要である。また、最近では、最新のIT技術を活用して、行政手続コスト削減を可能とする新たなビジネスが成長する一方で、法令・制度上の課題も生じている。行政手続コスト削減に続く方策としては、欧米と同様の方策(「1 in 2 outルール」等)の導入を検討すべきではないかと考えられる。