執筆者 | 浜口 伸明 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2019年10月 19-P-019 |
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概要
超高齢化社会と少子化により今後長期間人口減少から逃れられない日本にとり、都市・地域が安定的に発展することは、国の経済が持続的に成長するための根幹である。地方都市では郊外開発を規制して、中心市街地に再集積を促す地理的エリアを対象にした政策が実施されているが、事業者の立地決定要因に働きかけて結果として生じる集積の効果に期待する政策を検討する余地がある。人口流入があり日本経済をけん引する大都市では長時間通勤を緩和する住宅、都市交通、テレワークなどの働き方に関する政策や、農地の宅地転用を促す土地税制の変更などで広義の都市に居住するコストを引き下げて、国際的都市間競争力を高める必要がある。今後は外国人居住にも対応しなければならない。また、特に地方離れが著しい若者が地方圏でも良い雇用を得られるように、イノベーションと有効な自然資源の利活用で生産性を上昇させる必要がある。知識創造社会では同質的な知識の集積の大きさよりも固有知識の多様性が大きくなり、局所的および大域的なネットワークを使い分けてイノベーションを活発にすべきで、この意味では人口減少は重要な経済成長を抑制する要因にならない。第4次産業革命がもたらす技術革新は地方の生産性上昇に貢献するのみならず、人口減少により自治体だけでは困難になっている社会サービスの提供や、遊休化する資源・資本と他地域の潜在的ユーザーのマッチング、エビデンスに基づく政策決定などを可能にし、さまざまな社会問題の解決にも役立つであろう。