AIと社会の未来―労働・グローバライゼーションの観点から―

執筆者 林 晋 (京都大学)
発行日/NO. 2017年11月  17-P-033
研究プロジェクト 人工知能が社会に与えるインパクトの考察:文理連繋の視点から
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概要

米国のAIスタートアップの多くは、AIを専門的労働者の能力を飛躍的に高めるパワードスーツ Augmented Intelligence として理解しており、その理念に基づいてビジネスを展開している。「AIが仕事を奪う」と言うが、本当は「AIを所有する者が仕事を奪う」のである。複数のAIを「徒弟」として使い、同時に複数の仕事をこなす高度技術者が低スキル労働者から「職を奪う」社会は目前に迫っている。AIは格差問題をさらにエスカレートさせる可能性が高いのである。従来の常識に囚われない、労働の独占禁止法、生産資本の再配分などの「労働についての新社会システム」の構築が必要である。

また、AIは、現在の反グローバリズムの潮流に掉さす可能性がある。たとえば、iPhoneを、米国本土の少数の高度技術者と多数のAIが働く工場で生産し、中国に輸出するというシナリオが考えられる。もちろん、工場は日本にも置ける。近未来の日本の社会のために、AIにより可能となる、全く新しい世界経済システム像を考える必要がある。