北九州市響灘地区洋上風力産業拠点の形成にみる我が国の洋上風力の特徴

執筆者 岩本 晃一 (上席研究員)
発行日/NO. 2017年8月  17-P-026
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概要

北九州市響灘沖洋上風力発電所は、3つの特徴を持つ。1点目は、世界に比肩できる日本初の大規模な民間企業による商業用洋上風力発電所である。2点目は、沖合の洋上風力発電所の運転を目指しているのみならず、響灘地区を、ドイツのブレーマーハーフェンのような産業集積拠点化することを目指している点である。そのため、沖合の洋上風力発電所を建設することは、産業集積拠点形成の第一歩である。3点目は、改正港湾法(平成28年5月20日公布、7月1日施行)を適用する初のケースである。これまで港湾区域内に風力発電所を建設する場合であっても、手続きは特段の定めが無かったが、改正港湾法により法による手続きが定められることとなった。北九州市の動向を注視していた地方自治体のなかから、今後、北九州市に続いて、第2、第3の改正港湾法のスキームによる実施地域が出現するだろう。

今、ようやく日本国内に、世界に比肩できる洋上風力発電所が現実の姿となりつつある。未だに日本人の多くは、本格的な洋上風力発電所を見たことがない。日本人が響灘沖で大きく羽根を回す風車群を見たなら、きっと洋上風力に対する認識が、大きく変わるだろう。今後の我が国における洋上風力の開発に対する大きな弾みとなることは間違いない。すなわち、響灘沖は、日本のリーディング・プロジェクトとして重要な位置付けにある。

本稿は、響灘沖の洋上風力発電所の事業者の選定が終わり、将来の事業計画が具体的に議論できる段階になったことを踏まえ、これまでの活動実績をとりまとめるとともに、このプロジェクトから我が国の洋上風力プロジェクトの特徴および今後について分析・議論するものである。