中国の一帯一路構想は「相互繁栄」をもたらす新世界秩序か?

執筆者 榎本 俊一 (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2017年7月  17-P-021
ダウンロード/関連リンク

概要

本稿は、中国の「新世界秩序」ビジョンである一帯一路構想を理解するためのフレームワークを提供し、今後、日本が中国の世界政策に的確に対応する資たらんとするものである。(1)一帯一路構想は、従来の海上貿易に基づく日米欧主体の世界経済に代わり、陸上交通を基軸にユーラシア大陸主体の世界経済圏を創出する気宇壮大さにより世界の支持を得た、(2)しかし、一帯一路は中国のアジア型援助の延長上にあり、中国の対外援助はプロジェクト形成が国有企業主導で行われるため、援助が被援助国の発展ではなく中国企業の短期利益に傾斜する傾向がある、(3)中国は2000年代央以降アフリカで「援助の名の経済収奪」との非難を浴びたが、一帯一路の「共同繁栄」の宣伝とは裏腹に、スリランカではアフリカと同一の現象が発生している(ラオスは中国企業の短期利益狙いのプロジェクトを何とかコントロールしている)、(4)スリランカとラオスの運命の違いは、ガバナンスの強弱、経済発展ビジョンの有無に加えて、スリランカが開発援助で中国依存に陥ったのに対し、ラオスがタイ、ヴェトナム、日本などの支援も確保し「マルチ援助環境」を維持したことによる、(5)我が国が一帯一路のプロジェクトに関与する場合、被援助国の長期発展の観点から厳選する必要があり、また、マルチ援助環境の維持・強化の観点からAIIBなどから独立性を維持することが適切である。