わが国における政策の不確実性

執筆者 伊藤 新 (研究員)
発行日/NO. 2017年6月  17-P-019
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概要

本稿ではArbatli et al. (2017) が作ったわが国における1987年1月以降の政策不確実性指数について解説する。その指数は「経済」「景気」「不透明」「不確実」「不確定」「不安」そして政策関係の用語を含む新聞記事をもとに算出される。指数は内閣の退陣や与党が苦戦を強いられた国政選挙のときに上昇している。またそれは1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマン・ブラザーズの経営破綻、2010-2011年の欧州債務危機、2011年の米国での財政問題、2016年の日銀によるマイナス金利政策の導入、英国でのEUからの離脱の是非を問う国民投票、消費税率の引き上げ再延期のときに高い水準に達している。政策の不確実性の上昇は国内要因だけでなく海外要因によっても生じる。Arbatli et al. (2017) は全政策の指数に加えて個別政策、具体的には財政政策、金融政策、通商政策、為替政策の指数も作っている。個別政策の指数は他のものとはっきり異なる特徴をそれぞれ有している。個別政策のうち財政政策の指数が全政策の指数と強く相関しており、これは政策の不確実性の主因が財政関係の事柄であることを示している。最後に、政策不確実性指数とマクロ経済変数を用いたシンプルな実証分析から政策の不確実性の上昇は経済パフォーマンス悪化の予兆になることがわかった。この結果は、政権運営を安定させたり政策の先行き見通しをはっきりさせたりして政策の不確実性を多少とも下げることが経済パフォーマンスの向上につながることを示唆している。