執筆者 | 大橋 弘 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2015年11月 15-P-020 |
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概要
「新しい産業政策」プログラムは、経済の新陳代謝を後押ししイノベーションの芽を育てるための政策的な対応をアカデミックな観点から模索すべく研究を行った。これらの研究は2つの視点――既存産業の再生(新しい「産業政策」)と新産業の創出(「新しい産業」政策)――に整理される。既存産業の再生では、これまで規制などが理由で十分な生産性の向上が見られなかった産業に対して、新たな改革の視点を取り込む研究を行った。特に焦点をあてたのは、農業とエネルギー産業である。加えて中小企業政策や独占禁止法などの企業法制度も研究の射程に入れた。
新産業の創出については、経済成長の原動力となることが実証的にも明らかだが、事業が独り立ちするまで息の長い取り組みが必要とされる。経済協力開発機構(OECD)主要国の中で国民1人あたりベンチャー投資額を比較すると、わが国は最下位に近く、起業数も国際的に精彩を欠いている。この状況を打開するため、需要・供給双方の面からイノベーションの活性化を「産業政策」として取り組むことは意義がある。本プロジェクトでは多角的な観点から新産業創出の土壌となるプロダクト・イノベーションの活性化について分析を行った。
本稿では、まず「産業政策」の定義を紹介し、その歴史的な変遷を概観する。その上でイノベーションの観点から「新しい産業政策」プログラム全体を横断的に俯瞰しつつ、知的財産や企業合併などを含む企業法制度についても言及する。各論では、エネルギー・農業・中小企業政策の3つのテーマを取り上げ、最後に今後の「新しい産業政策」の方向性を論じる。