雇用制度・人材教育改革に向けて―人的資本プログラムの研究成果と政策インプリケーション―

執筆者 鶴 光太郎  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2015年10月  15-P-016
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概要

急速な高齢化の進行、グローバル競争の強まり、資源小国である日本が経済活力を維持・強化し、成長力を高めていくためには、人的資源の活用が大きなカギを握っていることは言うまでもない。本稿は、上記のような問題意識に基づいて行われてきた、RIETI人的資本プログラムの下での研究成果を、教育改革、非正規雇用改革と最低賃金改革、正社員改革、ワークライフバランスとメンタルヘルス、女性活躍推進に分けて紹介することとする。

主な政策的含意としては以下が挙げられる。就業前の教育については、認知能力のみならず、非認知能力、特に、勤勉性を養うことが将来の人生に向けて重要である。深刻化する労働市場二極化に対応するためには、非正規労働者の均衡処遇を進め、希望する者には正規雇用の道を開くことが重要だ。貧困対策として最低賃金引き上げが注目されるが、特定の経済主体へのマイナス効果、政策決定プロセスの見直しなどに留意すべきである。一方、正規雇用に対しても、長時間労働の是正、限定正社員の普及、解雇無効の際の金銭解決制度導入が大きな課題となっている。

ワークライフバランス、メンタルヘルス、女性活躍といった喫緊の課題についても、戦後築かれてきた日本的な雇用システムの根幹にかかわっていることが明らかとなった。今後、システムとしての整合性を考慮しながら、そのような雇用システムを目指すのか。包括的な視点からの分析、政策提言が求められよう。