経済の強靭性(Economic Resilience)に関する研究の展望

執筆者 藤井 聡  (京都大学) /久米 功一  (名古屋商科大学) /松永 明  (コンサルティングフェロー) /中野 剛志  (コンサルティングフェロー)
発行日/NO. 2012年4月  12-P-008
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概要

世界的な経済危機や未曾有の大震災によって、さまざまな分野で脆弱性が露呈する中で、外的ショックを回避、被害を最小化し、迅速に回復できる社会経済基盤の構築が強く望まれている。この危機時の耐性と急回復する力を「レジリエンス(Resilience)」という。

本稿は、レジリエンスに関する研究を広く概観した上で、経済分野におけるレジリエンス研究の今後の方向性を示すことを目的とする。具体的には、心理学、防災工学、経済学(開発経済、地域経済、マクロ経済、産業連関分析)におけるレジリエンスの定義や尺度、いくつかの実証分析を取り上げる。さらに、経済・産業政策への応用、産業界の取り組みを紹介した後、2008年秋の経済危機後のマクロ経済のレジリエンスに関する試論を述べる。最後に、レジリエンス研究の意義を述べて、他分野のレジリエンス概念を経済分野に取り入れた場合のレジリエンス研究の可能性を提示する。