ホワイトカラー・エクゼンプションの働き方への影響

執筆者 黒田祥子  (東京大学) /山本勲  (慶應義塾大学)
発行日/NO. 2010年2月  10-P-001
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概要

本稿は、労働時間規制あるいはホワイトカラー・エグゼンプションが日本人の働き方にどのような影響を与えるかについて議論する。本稿では、管理監督者などが該当する現行の労働時間規制の適用除外をホワイトカラー・エグゼンプションと定義し、それが労働時間や賃金に与える影響を推計すると、ホワイトカラー・エグゼンプションの大きさはどの労働者に対しても等しいものではなく、属性によって異なることが示される。具体的には、労働時間規制が適用除外されている場合、卸小売・飲食・宿泊業で働く労働者や大卒以外の労働者では労働時間が長くなる傾向がある。一方、大卒労働者については、逆に労働時間が短くなる傾向がある。このうち、労働時間が長くなる傾向のある労働者については、平均的にみれば、労働時間規制の適用除外で労働時間が長時間化した分は、基本給の上昇によって補償されるとするfixed-jobモデルという経済理論が成立している可能性がある。また、労働時間が短くなる傾向のある労働者については、長時間労働で昇進確率が有意に高まるトーナメントモデルという経済理論が当てはまり、昇進に至るまでの出世競争がそれまでの労働時間を長時間化させている可能性がある。

これらの結果は、少なくとも現行制度の枠組みのような労働時間規制の適用除外をすることや、ホワイトカラー・エグゼンプションの適用範囲を拡大することは、労働時間が劇的に長くなったり、時給が不当に大幅に低下したりする可能性が低いことを示唆する。