製品アーキテクチャ論と企業行動・経営活動の実証分析

執筆者 大鹿 隆  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2008年10月  08-P-010
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概要

本稿では、経済産業省 経済産業研究所(略称:RIETI、以下RIETIと記述)のディスカッション・ペーパー(大鹿隆・藤本隆宏著「製品アーキテクチャ論と国際貿易論の実証分析(2006年改訂版)」“RIETI Discussion Paper Series 06-J-015”(2006年3月))で作成された組立製品・プロセス製品のインテグラル・アーキテクチャ指標を使って、企業行動・経営活動と、企業が生産する製品の「製品アーキテクチャ」の関係の分析を試みる。具体的には、経済産業省と共同で実施した企業アンケート(33社、254製品)の回答について、企業別製品別営業利益率を推計して、インテグラル・アーキテクチャ指標との回帰分析を実施した結果、「インテグラル・アーキテクチャ指標が高いほど(製品のインテグラル度が高いほど)、営業利益率が高い」という実証分析結果を得た。また、説明変数として、インテグラル・アーキテクチャ指標のほかに投資関連指標(研究開発投資、設備投資)を説明変数として追加した回帰分析でも組立製品、プロセス製品とも統計的に有意な結果が得られており、その結果は、「組立製品ではインテグラル度、研究開発投資、設備投資額がともに高いほど、営業利益率が高くなる傾向があり、プロセス製品ではインテグラル度、研究開発投資、減価償却費がともに高いほど、営業利益率が高くなる傾向がある」という結果が得られた。この点を政策的インプリケーションから見てみると、企業の製品別営業利益率を高めるためには、第一に両製品とも研究開発投資が重要であるが、第二には「組立製品」は設備投資が重要、すなわちユーザーニーズをすばやく察知して、すばやい設備投資を実行し製品を開発・生産・供給して売り上げ・利益を確保することが重要なことを意味する。「プロセス製品」では設備投資額が「組立製品」より巨額になることが多いため、計画的・段階的設備投資の実行(設備投資の累積として減価償却額に実現)により他社と差別化された設備投資の累積による製品開発・生産・供給が、長期的に売り上げ・利益を確保する重要な要因であることを示している。