サービスセクター生産性に関するサーベイ

執筆者 加藤 篤行  (研究員)
発行日/NO. 2007年11月  07-P-005
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概要

近年、OECD諸国において経済のサービス化が顕著に進む中で、そのマクロ経済への影響、生産性ダイナミクス、経済・産業政策へのインプリケーションに対する研究が強く求められるようになってきた。とりわけ、90年代後半に米国で生産性のリバイバルが実現して以降、欧州や日本においても、長期的な経済成長戦略の観点からそのメカニズムの解明は最重要研究課題の1つとなっている。今日までの研究においては、主に(1)サービスに関する概念整理と分析対象の明確化、(2)経済サービス化の様態とその影響、(3)生産性成長の要因分析の3つの論点から研究が進められ、サービスセクターに関して、従来考えられてきた「製造業と比べて技術革新・資本蓄積・規模の経済性の面で劣る」と言う認識がもはや必ずしも適切なものとは言えないこと、生産性ダイナミクスは国別、産業別の違いが非常に大きいこと、競争促進的な規制改革や情報通信技術(IT)の有効活用が生産性成長率上昇を実現する上で重要な要素であることが明らかにされてきた。また、アウトソーシングやFDIを通じた国際化や柔軟な労働市場の役割、さらには成長のエンジンとしてのイノベーションのより現実を反映した定義とその分析への関心も高まっている。しかしながら、こうした最近のサービス生産性への関心の高まりにも関わらず、これまでの研究成果の蓄積はデータ制約等の条件もあり豊富になっているとは言えない状況にあり、体系的で明確な政策インプリケーションが得られるまでには至っていない。そこで、本稿では多様な側面を持つサービスセクターの生産性研究に関して、先行研究の成果を欧米と日本の実証研究を中心にサーベイし現時点での研究成果の整理および課題の明確化を行い、今後の研究の方向性について考察する。