東アジアにおける日本の過去・現在・未来
―都市集積の変容から見た一考察―

執筆者 久武昌人  (上席研究員)
発行日/NO. 2005年6月  05-P-003
ダウンロード/関連リンク

概要

Krugman(1991)等により「新しい空間経済学」が構築されて以来、規模の経済と(広い意味での)輸送費用の相互作用により内生的に生じる「集積の経済」が、国際経済に与える影響に注目が集まっている。本稿では、この「新しい空間経済学」の視点から、戦後の日本における地域経済構造の変容、及び、東アジアにおける最近の国際地域経済システムの発展の両者について、これらを統一的に分析することを試みる。具体的には、まず、日本の地域経済構造について、高度成長期までの三大都市圏を中心に成長する構造から、近時点ではいわゆる「東京一極集中」型の構造に転換してきていることを示す。次に、「集積の経済」によるロックイン効果と自己組織化効果がこうした現象が生じさせたと考えられること、また、同じメカニズムが国境を越えるストロー現象を引き起こす可能性があることを説明する。以上を踏まえて、続く節では、最近の東アジアにおける製造業の地域集積の発展と日本経済構造の変容との関連性に注目した分析を行う。その結果によれば、東アジアの地域経済システムは依然として日本一極集中型であると言えるものの、日本コアの集積のもつ相対的な力が低下しつつあることが示唆された。まとめの部分では、経済成長と制度・集積の関係、都市の機能、東京と地方の関係等について考察すると共に、多様性の受容が重要な課題であることに言及し、さらに、将来の日本及び東京圏の姿に関して、幾つかの可能性を提示する。