食品の安全性と貿易について考える

執筆者 山下一仁  (上席研究員)
発行日/NO. 2004年4月  04-P-006
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概要

BSEの発生後、国民・消費者の食品の安全性に対する関心は高まっている。WTO・SPS協定は食品や動植物の検疫措置が国際貿易を意図的に制限する目的で運用されないようにすること等をねらいとしている。EUは外国産品の安全性・有害性を十分判定できない場合、健康等への被害を立証する科学的根拠が不十分でも暫定的な措置をとることができるとする予防原則を主張している。しかし、SPS協定は関連国際機関などからの入手可能な適切な情報に基づくこと等を要求しており、予防原則の適用は限定されている。このように、輸出の利益が環境や消費(食品安全)ひいては生命・健康といった利益に優先している場合がみられる。また、安全性の観点からある食品の流通を認めるかどうかということとどのような表示を要求するかは別の問題である。これから、アメリカ産牛肉の輸入禁止問題への解答が出てくる。