なぜ人民元の切り上げが必要なのか
―日本のためでなく中国自身のためである―

執筆者 関志雄  (上席研究員)
発行日/NO. 2004年3月  04-P-003
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概要

中国の外貨準備の急増に示されるように、人民元は切り上げ圧力に晒されているが、中国政府が人民元の切り上げに対して慎重な姿勢を採っている。しかし、割安になった現在の為替水準を無理に維持しようとすると、対外不均衡が一層拡大し、資源配分の低効率化、バブルの膨張、対外貿易摩擦の激化といった弊害が生じるであろう。為替レートの調整に加えて、為替制度自身も見直しを迫られているが、ドルペッグに代わるものとして、バスケット、バンド、クローリングに基づく「管理変動制」が有力な候補となる。一方、日本では人民元の大幅な切り上げを求める声が根強い。しかし、日中関係が競合的というより補完的であることを考えれば、「元高」は、日本にとって、製品に対する需要の増大というプラスの面より、生産コストの上昇を通じた企業収益と産出の減少というマイナスの面の影響が大きいと見られる。このように、人民元の切り上げは、日本のためでなく中国自身のためであると言える。