| 執筆者 | 沼田 法子(千葉大学)/関沢 洋一(上席研究員)/柏 一婧(千葉大学)/三好 未来(千葉大学)/松澤 朱里(千葉大学)/野田 義和(東都大学)/佐々木 翼(千葉大学)/清水 栄司(千葉大学) |
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| 研究プロジェクト | 医療と健康についての今後の政策のあり方を探求するための基礎的研究 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
政策評価プログラム(第六期:2024〜2028年度)
「医療と健康についての今後の政策のあり方を探求するための基礎的研究」プロジェクト
更年期に伴う心身の不調は個人のウェルビーイング上の問題であるのみならず、就労上のパフォーマンスの低下、欠勤や離職などにも関連し、労働生産性の低下を通じた社会的・経済的損失でもある。
女性の更年期に生じる代表的な症状の一つとして抑うつがある。更年期は閉経移行に伴って卵巣ホルモンが減少する時期であり、また、この時期は、子育て役割の変化、親の介護、自身の将来を見据えた将来設計の再考など、社会的役割や生活状況が大きく変化する時期でもある。そのため、生物学的な要因に加えて、心理・社会的要因が重なり、抑うつ症状を生じやすい。
こうした現状を踏まえて、本研究では、更年期に伴う抑うつ症状を有しているものの医療機関を受診していない女性を対象に、千葉大学が開発した認知行動変容アプローチに基づくデジタルセルフケアアプリが、更年期症状における対処法の向上と抑うつ症状を改善するかを、ランダム化比較試験により検証することを目的とした。
分析結果と考察
抑うつ症状を有する40~59歳の女性を対象としてインターネット上で研究参加者を募集した。募集条件を満たした968名を、介入群488名、対照群480名の2群にランダムに割り付け、介入群にLINE公式アカウントを用いたアプリによる行動変容を促すプログラムを提供した。一方、対照群は非介入で質問紙への回答のみを依頼した。
プログラム終了後、介入群では229名が介入後の質問紙に回答した。対照群では355名が回答した。ベースライン値を調整した介入群488名と対照群480名のデータと介入後データ(介入群229名、対照群355名)を用いて、反復測定混合モデル(MMRM)による分析を実施した。
分析の結果、介入群は対照群と比べて、抑うつ症状(PHQ-9)、不安症状(GAD-7)、および精神的健康状態(WHO-5)において、統計学的に有意な改善を示した(図1)。
一方で、更年期症状に対する対処と簡略更年期指数(SMI)においては有意な改善は見られなかった。
但し、介入群に割り当てられたものの実際には介入を受けなかった参加者が約半数と多かった上に、これらの者の介入後のデータが欠測しており、ランダム化比較試験における原則である研究参加者全員を対象とした解析(ITT解析)を実施できなかった。そのため、本研究で示された介入効果は、実際よりも過大に評価されている可能性がある。
本研究で用いられたプログラムは、医療機関を受診していない更年期女性に対する早期支援として有用である可能性がある。今後は、介入群に割り当てられたにも関わらずプログラムを実施しない参加者を最小限に抑えるための工夫を行った上で、ITT解析を可能とする制度設計の下で、改めて効果検証を行う必要がある。そこで効果が確認されれば、本プログラムがより幅広い実装へと展開されることが期待される。