| 執筆者 | Andreas MOXNES(BI Norwegian School of Business / CEPR)/ 齊藤 有希子(上席研究員(特任)) |
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| 研究プロジェクト | イノベーション、グローバリゼーションと雇用 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
地域経済プログラム(第六期:2024〜2028年度)
「イノベーション、グローバリゼーションと雇用」プロジェクト
多国籍企業(MNE)は、世界経済において中心的な役割を果たしている。MNEの企業数の割合は小さいものの、全世界の付加価値の約3分の1、国際貿易の3分の2を占めている(Miroudot and Rigo, 2022)。多くの企業研究では、企業の異質性に注目し、なぜ少数の企業のみがMNEになり、海外直接投資(FDI)を行うのか、そして、どの国の市場に進出するのかが分析されてきた。これらの研究では、主に貿易障壁、参入コスト、企業の生産性に基づく選択として、企業の国際化の意思決定を分析してきた(Antras and Yeaple, 2014; Helpman et al., 2004; Irarrazabal et al., 2013)。本研究では、既存研究において体系的に分析されることがほとんどなかった現象、すなわち追随型海外直接投資(follow FDI)を研究している。
これは、多国籍企業の仕入先が、多国籍企業の顧客と同じ国に海外子会社を設立し、それによって国内の取引ネットワークの一部を海外で効果的に複製する状況を示している。具体例として、自動車産業があり、自動車メーカーが新たな国に工場を設立すると、下請け企業もそれに追随する。
日本企業の海外子会社に関するデータと、国内の取引関係データを組み合わせることで、追随型海外直接投資が広く普及しており、経済的に重要な意味を持つことを明らかにした。
本研究の結果は、国内生産ネットワークがグローバル・バリューチェーンをどのように形成しているか、そして多国籍企業がサプライヤーの国際化決定にどのように影響を与えているかについて、新たな知見を提供する。
本分析は、2つの日本のユニークなデータセットに基づいている。1つ目は日本企業の海外子会社に関する詳細な情報(国内、日本、第三国への売上高など)を提供する「海外事業活動基本調査」で、2つ目は東京商工リサーチによる日本の生産ネットワークに関するデータである。これらのデータを結合させて、企業レベルでの国内生産ネットワークと海外投資の関係を分析できる。
主な発見は3つある。第1に、多国籍企業は非常に少数であるが、多くの企業が取引関係を通じて多国籍企業とつながっている。我々のデータからは、日本の企業全体の約0.6%が多国籍企業である一方で、20%以上の企業が、多国籍企業に財やサービスを提供している。多国籍企業は生産ネットワークを通じて経済に大きな影響を与えている。
次に、日本企業の海外子会社の現地売上のかなりの割合が、同じ国に進出した他の日本企業の海外子会社に向けられていることである。自動車産業の例でいうと、日本の多国籍企業の仕入先が、国内の販売先に追随して同じ国に進出し、売上の多くが日本の販売先の海外子会社に向かっていることを示唆している。現地での売上の約3分の1は、現地の顧客ではなく、他の日本企業の海外子会社に向けられている(図表1)。このことは、既存研究において、統計上「現地売上」として表れるものの多くが、実際には複製された日本の企業の取引ネットワークの内で発生していることを意味する。
最後に、海外で主に他の日本子会社に販売している企業は、一般的に他の多国籍企業よりも国内市場規模が小さいことが確認された。このことは、多国籍企業との国内での取引関係が、比較的小規模な仕入先にとって、国際化のハードルを下げる可能性を示唆している。
以上の統計的事実が示唆する、多国籍企業の仕入先の追随する海外進出について、因果関係を示すため、イベントスタディ(Alfaro Urena et al., 2022)を用いて検証した。国内の取引関係が海外進出の意思決定に影響を与えるのか、単に「優良」企業が多国籍企業に販売を始めると同時に、海外投資を行うという事実を捉えているだけなのか、という点である。この点を検証するために、企業が初めて多国籍企業に販売を始めた時点を特定し、その後、その企業が海外子会社を設立する確率を追跡した。比較対象グループは、全期間において多国籍企業に販売していない企業である。分析結果によると、多国籍企業に販売することにより、多国籍企業になる確率は、図表2のように、全産業において、0.2%上昇し、多国籍企業の割合(0.6%)と比較し、30%増加することが明らかになった。さらに、進出先も考慮した分析では、企業と年の交差の固定効果を入れることにより、企業の業績の変化をコントロールしても、多国籍企業の販売先の進出先の国に進出する確率が有意となり、因果関係を強く示している。
本研究の結果は、いくつかの重要な示唆を与える。第一に、これらの研究は多国籍企業の「現地販売」に関する従来の解釈に疑問を投げかけている。こうした販売は必ずしも水平的FDIと呼ばれる、現地の最終市場を対象とするものでもなく、垂直統合された国際的なバリューチェーンの一部となっている。第二に、この結果は、多国籍企業になるという決定が孤立して行われるものではないことを示している。国内生産ネットワークは国際市場への通路として機能し、多国籍企業は世界中に取引ネットワークを構築することができる。第三に、追随的な海外直接投資は、進出先国における波及効果の理解に影響を与える可能性がある。多国籍企業が互いに供給し合っている場合、多国籍投資による地域への波及効果は、これまで考えられていたよりも弱い可能性がある(Javorcik, 2004)。
- 参考文献
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- Alfaro-Urena, Alonso, Isabela Manelici, and Jose P. Vasquez, “The Effects of Joining Multinational Supply Chains,” Quarterly Journal of Economics, 2022, 137 (3), 1495–1552.
- Antràs, Pol and Stephen R. Yeaple, “Multinational firms and the structure of international trade,” Handbook of international economics 4, 2014.
- Helpman, Elhanan, Marc J. Melitz, and Stephen R. Yeaple, “Export versus FDI with Heterogeneous Firms,” American Economic Review, 2004, 94 (1), 300–316.
- Irarrazabal, Alfonso, Andreas Moxnes, and Luca David Opromolla, “The margins of multinational production and the role of intrafirm trade,” Journal of Political Economy, 2013, 121 (1).
- Javorcik, Beata Smarzynska, “Does Foreign Direct Investment Increase the Productivity of Domestic Firms?,” American Economic Review, 2004, 94 (3), 605–627.
- Miroudot, Sébastien and Davide Rigo, “Multinational production and investment provisions in preferential trade agreements,” Journal of Economic Geography, 2022, 22.