| 執筆者 | 山村 英司(西南学院大学)/戸堂 康之(ファカルティフェロー) |
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| 研究プロジェクト | 貿易・投資と経済安全保障の関係に関する研究 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
貿易投資プログラム(第六期:2024〜2028年度)
「貿易・投資と経済安全保障の関係に関する研究」プロジェクト
研究の背景と目的
2025年7月の参院選で大敗した自民党は、2026年2月の衆院選で高市早苗首相の下、大幅に議席を回復した。本研究は、この選挙間の投票行動の変化を分析することを目的とする。独自オンライン調査により19,945名の回答を回収し、その中に含まれる14,431名の有効回答者を対象としたサンプルを用いて統計分析を行った。これにより消費税の削減・廃止を掲げる政党が乱立するなか、有権者の投票行動を分けた要因を検証した。なお、本研究はあくまでも調査データに基づく探索的分析であり、因果関係を確定するものではない。
主な分析結果(いずれも留保条件付き)
分析結果の解釈(一つの仮説的説明として)
分析結果①について、関税引き上げは輸入品価格の上昇という予測可能なコストを伴うのに対し、移民受け入れは社会変化の予測可能性が低いという点で性質が異なるため、この2つの政策に対する見方が投票行動に対して異なる影響を及ぼすと考えられる。ただし、こうした差異が、有権者の反応の違いに反映されている可能性はあるが、他の政策への態度(原発・憲法改正など)との相関が十分に制御できていないため、移民・関税への態度の効果は過大評価されている可能性がある(後述の留保条件を参照)。
分析結果②について、一つの解釈として、「外国人への反対」というよりも「素性が確認できない相手への心理的な不安」が自民党支持に影響している可能性が考えられる。職場の外国人は業務を通じて能力や信頼性が確認できる一方、近隣の外国人はその背景が不明なまま接触が生じやすい。社会心理学の知見によれば(山岸俊男, 1998)、日本社会では顔見知りへの「安心」を重視し、素性の不明な相手への「信頼」を広げにくい傾向があるとされており、今回の結果はこうした傾向と整合的かもしれない。ただし、この解釈はあくまでも推察の域を出ない。
政策的示唆(仮説的・探索的なものとして)
以下はあくまでも本分析から得られる示唆の一つとして提示するものであり、政策の方向性を確定的に主張するものではない。
- もし移民への慎重な態度が「文化的嫌悪」よりも「情報不足」に起因する部分があるとすれば、外国人の能力・背景を可視化する制度整備(資格・職歴の透明化、語学要件の明確化など)が、移民受け入れへの社会的理解を高める一助になりうるかもしれない。
- 職場での段階的な外国人との接触機会の拡大(特定技能制度の活用等)は、こうした心理的障壁を緩和する可能性がある。
- ただし、これらの示唆は本研究の限界(下記参照)を踏まえると暫定的なものであり、より厳密な設計による追証が必要である。
分析上の重要な留保条件(※)
- 参考文献
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- 山岸俊男 (1998). 『信頼の構造:こころと社会の進化ゲーム』 東京大学出版会.