執筆者 | 足立 大輔(研究員(特任))/川口 大司(ファカルティフェロー)/齊藤 有希子(上席研究員(特任)) |
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研究プロジェクト | 日本の労働市場に関する実証研究 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
政策評価プログラム(第五期:2020〜2023年度)
「日本の労働市場に関する実証研究」プロジェクト
この論文は、税政策が産業用ロボットの導入および企業の業績、特に雇用に与える影響に焦点を当てている。研究は、日本の生産性向上設備投資促進税制(TC-PPEI)の政策変動と、新たに収集された日本の企業レベルのロボット導入に関する縦断的データを組み合わせた分析に基づいている。論文では、TC-PPEIの対象企業がロボットの導入を増加させたことを示し、これらの企業ではロボット導入後に従業員数が減少することなく、むしろ1~3年後に顕著に増加し、売上も増加することが明らかにされた。これは、ロボットの導入が企業レベルで雇用創出の可能性を持つことを示唆している。
研究は、政策によって引き起こされたロボットの価格低下を活用して、ロボット導入が売上や雇用に与える影響を調べている。特に、TC-PPEIによって対象となる企業がロボットの導入を促進し、これが企業の業績向上につながっていることが示されている。この研究により、ロボット技術の導入が、適切な政策支援の下では、労働市場における雇用創出の源泉となり得ることが明らかになった。
また、この研究は、日本で初めて実施された企業レベルのロボット導入に関する調査データを使用しており、そのデータセットは、ロボットの購入価格や数量だけでなく、企業の売上や従業員数などの詳細な情報を含んでいる。この調査は、ロボットの導入が企業の業績に与える影響を量的に理解する上で重要な役割を果たしている。
論文では、ロボット導入による雇用の増加が観察された理由として、効率性の向上とそれに伴う企業規模の拡大を挙げている。ロボット技術による生産性の向上は、新たなビジネスチャンスの創出や既存の仕事の質の向上に寄与し、結果として全体としての雇用の増加につながる可能性がある。また、ロボット導入がもたらす効率性の向上は、企業がより競争力のある市場で活動できるようにすることで、長期的には雇用の質と量の両方を向上させる可能性がある。
この論文は、技術進歩が労働市場に与える影響についての議論に重要な貢献をしている。一般に、自動化技術の導入は、仕事の減少やスキルの陳腐化を引き起こすと見られがちだが、この研究は、適切な政策介入と組織設計により、技術進歩が雇用創出の機会を提供し得ることを示している。今後の研究では、ロボット導入が労働市場のさまざまな側面にどのように影響を与えるか、さらに詳細に調査することが求められる。