執筆者 | 近藤 明子(四国大学) |
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研究プロジェクト | アフターコロナの地域経済政策 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
地域経済プログラム(第五期:2020〜2023年度)
「アフターコロナの地域経済政策」プロジェクト
本稿は、わが国におけるCOVID-19感染拡大下の観光動向と意識を明らかにすることを目的に、全国を対象として実施したwebアンケート結果の分析を行った上で、景気動向やCOVID-19感染拡大が旅行者数に与える影響を定量的に明らかにするためのモデル構築を行うものである。モデル分析についてはその対象を1995〜2020年の26年間の日本全国としてモデルを適用する。
観光を取り巻く状況が劇的に変化してきた中で、COVID-19感染拡大下における観光に対する意識と観光目的や旅行先選択の要因を明らかにするために全国を対象に2020年及び2021年度の2時点においてwebアンケートを実施した。感染拡大前の意識についても質問し、その時の状況についての回答を得ている。各時点1,000人超程度の有効回答数を得ている。その結果、観光目的と観光の魅力としての項目について、どのようなことをどの程度重要と考えているかについては、図1の通り、感染拡大前後で特徴的な変化はみられなかった。観光目的の魅力については、食や風景、宿泊することそのもの(休息やホテルの利用)に対して「重要」または「とても重要」と回答した人の割合が7割前後である一方、テーマパークやイベント、体験型観光などに対して、同様の回答をした人の割合は4割に満たない結果となった。現状では、観光に自然や癒しを求める傾向にあり、人が多く集うと考えられる場所に対しては抵抗感があるとも捉えられる。これらのことは項目間の類似度について明らかにできるクラスター分析の結果にも表れている。図2は観光目的と魅力の重要度についての質問項目とそれらの項目の回答についてクラスター分析を行った結果を示している。
そのほか、観光に関する情報入手については、入手するタイミングや情報の種類、また年代によってもそのツールが異なることも明らかとなった。ICT技術の進展に伴って、観光促進のための情報戦略も今後ますます重要になることが示唆された。関連性を明らかにする関係式からは、景気と世界的パンデミックが旅行者数に影響を与えることを定量的に明らかにした。COVID-19感染拡大が収束した後には多くの観光客を促進させるために観光促進策のみならず、景気の好調感を増大させること、さらには交通利便性を向上させることも必要になる。これらの経済政策や交通施策は一つのエリアのみが取り組むことでは効果を生まず、近隣地域の連携や、国全体としての取組が求められる。

