コロナ禍における、代表者の年齢、企業退出とゾンビ化

地域経済プログラム（第五期：2020〜2023年度）
「イノベーション、グローバリゼーションと雇用」プロジェクト

コロナ感染症によるパンデミックは、公衆衛生上の危機から、前例のない不確実性を伴う、大規模な世界経済危機へと発展した。 これにより、世界中の企業の財務状況や事業継続に重大な脅威をもたらし、 さらに、コロナ感染症によって生み出された厳しいビジネス環境は、代表者の交代に影響を与えると予想される。驚くべきことに、Hong et al. (2022) では、日本では、この期間に企業の退出率が低下したことが確認されている。コロナ前に比べて、財務状況の悪い企業ほど退出する確率が低くなり、企業の浄化機能が弱まっていることを示唆している。一方で、企業がレバレッジを高めていることも確認された。

さらに、超高齢化という、日本の人口動態の変化の状況において、コロナ感染症のパンデミックは発生し、企業のダイナミズムにも影響を及ぼした。Hong et al. (2020) は、2017年以降に自主退出率が増加し、自主退出率は企業の代表者の年齢と強い相関があることを発見した。高齢化という人口動態の変化が加速する傾向にあり、前例のない人々の健康に関連する経済危機が、近い将来再発する可能性があるため、代表者の年齢プロフィールに応じて、経済危機中にゾンビ化や企業退出の意思決定が、どのように変化するかを理解することが重要である。

この研究では、2013年から2021年までの企業の退出、貸借対照表、損益計算書に関する企業レベルのデータを使用して、コロナ感染症のパンデミックがゾンビ化、企業の撤退、CEOの離職に及ぼす影響と、代表者の年齢がこれらの影響とどのように関係するのかを分析した。

企業の業績が悪化して財務レバレッジ、特に長期融資が増加したため、パンデミック中にゾンビ化の蔓延が増加したことがわかった。しかし、パンデミックによる企業の撤退やCEOの後継者への影響は限定的だった。

主要な結果として、代表者の年齢がゾンビ化、企業の退出、代表者の交代の重要な要因であることが確認された。パンデミックにより、企業のゾンビ化は若い代表者による企業によって、引き起こされており、これらの企業では負債、特に長期借入を負う可能性が高まったためである。一方で、年齢の高い代表者による企業では、特に自主的な退出が増え、代表者の交代が増える傾向があった。

さらに、都市部と地方では、傾向が異なることも確認された。具体的には、地方では、年齢の高い代表者による企業は、若い代表者による企業に比べて、コロナ感染症の期間中に自発的に退出する確率が高まるが、都市部では、そのような関係は見られなかった。一方で、都市部では、年齢の高い代表者による企業は、代表者が交代する確率が高まったことが確認された。さらに、家族経営の企業とその他の企業を比較したところ、家族経営の企業において、若い代表者による企業ほど、ゾンビ企業になる確率が高まり、年齢の高い代表者による企業ほど、自発的な退出や代表者の交代の確率が高まることが確認された。全企業による結果は、主にサンプル内の家族経営による企業によって引き起こされていることを示唆している。

我々の分析結果は、政策立案者にとって重要な意味を持つ。経済危機において、どのような要因により企業がより脆弱となるのかを理解することで、企業の特性ごとに、困難な時期を乗り切るための支援を行うことが可能となる。さらに、長期的に、地方における企業や家族経営の企業の自主的な退出や代表者の交代を見据えた政策を検討することが可能となろう。