執筆者 | 小西 葉子(上席研究員)/齋藤 敬(コンサルティングフェロー)/金井 肇(株式会社インテージ)/伊藝 直哉(株式会社インテージリサーチ)/水村 純一(ジーエフケー マーケティングサービス ジャパン株式会社)/志賀 恭子(株式会社Zaim)/末安 慶太(株式会社Zaim)/濱口 凌輔(株式会社Zaim) |
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研究プロジェクト | ビッグデータを活用した新指標開発と経済分析:サービス産業を中心に |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
産業フロンティアプログラム(第五期:2020〜2023年度)
「ビッグデータを活用した新指標開発と経済分析:サービス産業を中心に」プロジェクト
2020年1月以降、世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大し、日本は3回の緊急事態宣言を経験したが、諸外国のような強制的なロックダウンや行動規制、マスク着用の義務がない中でこの危機に対処してきた。感染抑止のヒントは私たちの日常生活にあるが、コロナ禍での必需品となった感染予防品、大きく影響を受けたサービス業について、公的統計調査では捉えることが難しい。
そこで本稿では、インテージ社とGfK社のPOSデータとZaim社のオンライン家計簿サービスのデータを用いて、コロナ禍での消費行動の包括的な記録を残すことを目的とする。
図1は、マスクと手指消毒剤の販売額の2019年同週比に新規陽性者数とワクチン接種率を重ねている。0%のとき、コロナ前と同等、100%の時にはコロナ前の2倍の販売増である。この2年間で常にコロナ前を上回り、感染拡大第二波のピーク時には、マスクは1689.2%増、手指消毒剤は2077.6%増と平時には類を見ない程高くなった。同週比が低く見える2021年12月第5週でもマスクは2019年の約1.65倍、手指消毒剤は約1.54倍増だった。感染者数の多寡、ワクチン接種率の高低に関わらずマスクと手指消毒剤を購入し続けたことがわかる。
コロナ禍では、キャッシュレス決済が普及した。利便性やポイント還元などのお得感に加え、非接触による感染予防という新たな付加価値を有したことが背景にある。業態別のキャッシュレス比率を見てみよう。
図2は、買い物場所別の決済回数ベースの各種決済比率である。グラフの中の数字はコロナ禍前の2019年1月(左)と直近の2021年12月(右)時点である。突出しているのがコンビニエンスストアで、72.7%がキャッシュレスによる支払いである。その他の3業態では、8割以上の決済で現金での支払いだった。
図3のカフェ、飲み会、美容院は来店が必須なので、オンラインショッピングは含まれない。一方、洋服は実店舗販売とオンラインショッピングの両方を含むのが特徴だ。図2よりもはっきりとキャッシュレス化が進んだことがわかる。突出しているのが洋服への支出で、キャッシュレス比率が80.7%で、クレジットカードでの決済が進んでいる。単価が高い洋服や美容院でクレジットカード、単価が低いカフェやコンビニエンスストアで電子マネーの使用が進んでいる。
コロナ禍でわたしたちの行動は大きく変わった。購入する商品やサービスの種類も量も、感染状況や社会環境の変化によって日単位、週単位で変動した。しかし、公的統計調査では週単位の変動は吸収され、公表は早くて翌月末、1~2年先となってしまうものもある。本稿では、ビッグデータを機動的に活用することで、コロナ禍の日本の消費行動を明確に描き出すことに成功した。