ノンテクニカルサマリー

日本の理数教育と研究開発力の推移

執筆者 西村 和雄 (ファカルティフェロー)/宮本 大 (同志社大学)/八木 匡 (同志社大学)
研究プロジェクト 日本の経済成長と生産性向上のための基礎的研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

人的資本プログラム(第五期:2020〜2023年度)
「日本の経済成長と生産性向上のための基礎的研究」プロジェクト

2000年代に入り、日本の研究開発力が低下しつつあることが文部科学省の科学技術白書などから指摘されてきた。自然科学系の論文発表数や特許指標も、2010年代以降は、世界のトップから引き離されつつあり、日本の研究開発力の低下は一過性のものではない。この低下の原因はさまざまであろうが、理数教育が理系研究者の質に与えてきた影響も重要な要因の1つであることには異論がないであろう。

本研究では、2016年、2020年の2度にわたる調査データを活用することで、過去50年間にわたる理数科目の授業時間数の変化の推移が研究開発者になって以降の研究開発活動に影響を及ぼしているか否かの検討を行った。具体的には、約10年ごとに変更された中学時代における理数科目の授業時間数と、研究開発者になってからの特許出願数、特許更新数、そして学会等での発表数、学術雑誌等への掲載論文数などの研究開発アウトプットとの関係を分析した。前調査の結果と今回の調査結果を比較すると、世代間の特許数の差には、年齢の違いでは説明できない変化があり、その変化は中学時代の理数科目の授業時間数と相関していることが分かった。

図 年齢別の特許出願数の推移:2016年・2020年調査データ
図 年齢別の特許出願数の推移:2016年・2020年調査データ

この結果は、日本の教育、特に、初等・中等教育における理数教育のあり方、人材育成、教育投資、研究開発の効率化を通じて、経済成長の促進に役立つであろう。