ノンテクニカルサマリー

どういう人々が新型コロナウイルスのワクチンを接種したがらないか:インターネット調査における検証

執筆者 関沢 洋一 (上席研究員)/橋本 空 (ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社)/越智 小枝 (東京慈恵会医科大学)/宗 未来 (東京歯科大学)/傳田 健三 (平松記念病院)
ダウンロード/関連リンク

このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)

1. 背景と研究方法

新型コロナウイルスの蔓延を終息させるためには多数の人々がワクチンの接種を済ませることが重要であるが、ワクチン接種に対して抵抗感を持つ人々が多いことも知られている。どのような人々が新型コロナウイルスのワクチン接種に対する抵抗感を持っているかについての実態把握が急務である。

本研究では、経済産業研究所で実施する全5回のインターネット調査の第3回目(2021年4月23日~5月6日実施)の結果を利用した。第3回調査で、ワクチン未接種の人々に対して「接種するつもり」「接種しないつもり」「まだ決めていない」の3つの選択肢からなる接種意欲の質問をしており、この質問と他の質問の回答を組み合わせることによって、どのような人々がワクチン接種をまだ決めていないのか、接種しないつもりなのかを明らかにした。

2. 結果

有効回答者数は11,846名で、まだ接種していない人々(11,637名)のうち、「接種するつもり」は60.9%で、「まだ決めていない」が30.1%、「接種しないつもり」が9.0%だった。「接種するつもり」の人々に比べて、「まだ決めていない」人々は、女性、低学歴者、低所得者、預貯金額の少ない人々、うつ傾向がある人々、やせている人々で多く、高齢者、夫婦のみの世帯、高血圧か脂質異常症の人々、最重視する情報源がテレビ(NHK)の人々、他人を信用する人々、新型コロナウイルスへの恐怖が強い人々で少なかった。ワクチンを接種しないつもりと回答した人々は、女性、低学歴者、預貯金額の少ない人々、全般的な不安傾向がある人々、新型コロナウイルスへの恐怖の小さい人々、やせている人々で多く、高齢者、夫婦のみの世帯、高血圧か脂質異常症の人々、最重視する情報源がテレビ(NHK)の人々、他人を信用する人々で少なかった。ワクチンを接種するつもりと回答した人々を年齢別、世帯収入別に見た結果を図1と図2で示した。

3. 政策的含意

本研究の結果を踏まえると、ワクチンの接種対象の年齢が下がるにつれて、ワクチン接種にブレーキがかかる可能性がある。ワクチン接種を全世代で推進しようとすれば、若年層で社会経済状況の低い人々(低学歴、低収入、低資産額)においてワクチンを接種する動機付けを強化する方法を模索することが必要になる。例えば、若年層に絞ってワクチン接種者に商品券を付与する、抽選で賞品を付与する、ワクチン接種済みの人々とそうでない人々の間で実施可能な行動に差を設ける(マスクの着用、イベントへの参加など)ことが挙げられる。ただ、いずれも財源確保や制度設計の難しさにおいて課題があり、公平性の問題を惹起する懸念もある。全国民のワクチン接種を目指さず、重症化リスクの高い高齢者におけるワクチン接種割合を着実に上げて、いわゆる医療崩壊を起こりにくくすることを目指す方が現実的かもしれない。

図1 年齢別に見た新型コロナのワクチンを接種するつもりと回答した人々の割合
図2 世帯収入別に見た新型コロナのワクチンを接種するつもりと回答した人々の割合

お詫び

図1の横軸ラベルが本来は「年齢」であるべきところ、間違って「年間の世帯収入」となっていたので、修正しました。また、DP本文の表1(P10とP11)で、「接種しないつもり」と「まだ決めていない」が反対になっており、また、「また決めていない」となっていたので、修正しました。お詫び申し上げます。
(2021年6月4日修正)