ノンテクニカルサマリー

地域依存型政策が企業の立地・投資行動の空間的分布に与える影響

執筆者 Cameron LAPOINT (Yale School of Management)/坂部 翔悟 (Columbia University)
研究プロジェクト 人口減少社会における経済成長・景気変動
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

産業フロンティアプログラム(第五期:2020〜2023年度)
「人口減少社会における経済成長・景気変動」プロジェクト

本稿は、特定地域・先端技術産業を対象とする税制優遇措置が企業の投資・雇用・立地選択に与える影響を分析した論文である。 1980年代から1990年代にかけて行われた日本の地域産業政策(テクノポリス政策及び頭脳立地政策)に関して、企業データと事業所データを用いた実証分析を行い、以下の結果が得られた。

政策の対象となった地域に工場を持つ企業は、特別償却制度の利用によって得たキャッシュ・フローを用いて、雇用・投資行動を促進させたことが分かった。特に、生産要素に占める建物の重要度が高く優遇税制の恩恵を受けやすい企業、また資金制約に直面している企業の反応が大きいことが分かった。

図:テクノポリス政策・頭脳立地政策対象地域
図:テクノポリス政策・頭脳立地政策対象地域
図:政策実施前後における特別償却の利用確率の変化
図:政策実施前後における特別償却の利用確率の変化
表:企業の資金政策が政策効果に与える影響
表:企業の資金政策が政策効果に与える影響

一方で、対象地域内での他産業への正の波及効果は見られず、非不動産投資については負の波及効果があった。また、特別償却制度を利用した企業は、政策の対象地域ではなく、むしろ対象外の地域でより雇用を増大させたことが分かった。

特定の地域産業を対象とした税制優遇措置は、対象地域・産業の経済活動を促進させる上で有効な手法である。しかし、地域内・地域間の波及効果によっては、政策担当者が意図していない効果が現れる場合がある。本論文は、複数地域に工場を所有する企業が、政策対象外の地域への波及効果を増幅させる可能性を示唆している。