ノンテクニカルサマリー

オンライン広告市場の競争分析

執筆者 川濵 昇 (ファカルティフェロー)/武田 邦宣 (大阪大学)
研究プロジェクト グローバル化・イノベーションと競争政策
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

産業フロンティアプログラム(第四期:2016〜2019年度)
「グローバル化・イノベーションと競争政策」プロジェクト

巨大なオンラインプラットフォーム事業者について、その多くはオンライン広告事業者でもある。オンライン広告における利益は、それらプラットフォーム事業者がユーザーに対して無料で提供するサービスの原資となっている。また、オンライン広告は、中小のウェブメディアを始め、多様なパブリッシャーに広告収入を得る機会を与えるともに、伝統的なメディアに広告を出す機会のなかった中小企業に広告の機会を与えた。オンライン広告市場は、オンラインの多様なプレイヤーが生存する基盤なのである。

このようにインターネットにおける最も重要なエコシステムの一つであるオンライン広告市場は、運用型広告の発展およびデータ処理技術の進化に伴い、イノベーティブなサービス、多様なプレイヤーで特徴付けられる。しかし多数のプレイヤーが活発に競争するように見えても、実際には、オンライン広告市場における競争優位性を決定づける「広告インベントリ」、「アドテク」、「データ」すべてに圧倒的な力を有するグーグルやフェイスブックが強固な「クローズドプラットフォーム(walled garden)」を構築しており、それが差別的な取引や不透明な取引の背景になっているのではないかとの懸念が指摘されている。

本ペーパーは、
①アドテクのなかでもパブリッシャー側のアドサーバーの力を利用したアドエクスチェンジ間の競争制限(オンラインプラットフォーム事業者が、自社の保有するアドサーバー(パブリッシャー側の広告インベントリを管理)とアドエクスチェンジ(広告主が入札により広告インベントリを購入)を垂直統合させたこと等により、他のアドエクスチェンジとの間の競争制限の懸念)
②連続的なセカンドプライスオークションの実施による不当な利益の獲得(「リアルタイム入札の利益」、「ラストルックの利益」、「鞘取りの利益」等)

など、オンライン広告市場について欧米で指摘されている競争法・競争政策上の論点を整理しており、わが国における法執行、政策に少しでも貢献できれば幸いである。

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