執筆者 | 佐藤 博樹 (中央大学) |
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研究プロジェクト | 労働市場制度改革 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
人的資本プログラム(第四期:2016〜2019年度)
「労働市場制度改革」プロジェクト
日本企業は、人材マネジメントとして、多様な人材を受け入れるだけでなく、多様な人材が活躍できる機会を用意し、それを経営成果に結びつけるダイバーシティ経営を定着させることが不可欠な社会経済環境に直面している。ダイバーシティ経営を企業内に定着させ、多様な人材の活躍を企業経営に結びつけるためには、多様な属性や価値観を持った人材を受け入れることができる職場マネジメント、残業を前提としたフルタイム勤務の解消や働く時間・場所の柔軟化の実現、さらに人事制度の改革が必要となることを、先行研究を踏まえて仮説として提示した。
この仮説を検証するために、大卒以上のホワイトカラー職種に従事するいわゆる正社員を対象とした個人アンケート調査に基づいて、ダイバーシティ経営の目的の1つである多様な人材の活躍度を規定する要因を分析した。分析モデルは、多様な人材の活躍度を被説明変数とし、説明変数にダイバーシティ経営に適合する人事制度(非年功型処遇管理、自己選択型キャリア管理)、ダイバーシティ&インクルーション施策、女性活躍推進施策、長時間労働の解消の取り組み、働き方に関する時間と場所の柔軟化、ワーク・ライフ・バランス管理職、多様性尊重職場風土を投入した(図参照)。
多様な人材活躍度を規定する要因を、標準化係数の中で有意でプラスとなる変数を比較すると、多様性尊重風土>女性活躍推進>非年功的処遇管理>ワーク・ライフ・バランス管理職>自己選択型キャリア管理>時間・場所の柔軟性の順となった。この結果によると次の3点が確認された。
第1に、ダイバーシティ経営が多様な人材の活躍に貢献するためには、多様性尊重職場風土を構築することが極めて重要で、同時にそれを職場で具現化するワーク・ライフ・バランス管理職の育成が不可欠となる。
第2に、企業の人事制度では、非年功的人事制度や自己選択型人事制度への転換が必要となる。言い換えれば、ダイバーシティ経営を導入、定着化するためには、従来の日本型人事制度の改革が不可避と言える。
第3に、残業削減など長時間労働の解消を実現すると同時に、働き方における時間と場所の柔軟化が有効となる。