執筆者 | 山本 英弘 (山形大学) |
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研究プロジェクト | 官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
特定研究 (第四期:2016〜2019年度)
「官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究」プロジェクト
本稿では、サードセクター(行政、企業以外で財やサービスを提供したり、アドボカシー活動をしたりすることによって、さまざまな社会的問題に取り組む民間組織)に対する全国調査データを用いて、団体の設立された時期とリソースの分布という観点から、現代日本のサードセクターの構成とその変容過程を検討した。サードセクター団体は、その時々の社会・政治変動の影響を受けて形成されている。そのため、どの時期にどのような団体が設立されたのかをたどることで、サードセクター全体が形成されていく過程を捉えることができる。
図1に示すように、日本のサードセクター団体の設立時期は、1990年代後半以降に多くみられる。これは、「アソシエーション革命」と呼ばれるサードセクターが台頭する世界的な潮流と符合するものである。団体の種別ごとにみていくと(図表は割愛)、日本のサードセクターは、終戦直後から高度成長期までに誕生した生産セクター関連の団体や協同組合、高度成長期から低成長期にかけて行政の支援を受けて設立された団体、そして、1990年代後半以降の公益法人制度改革の下で誕生した市民の自発的な結社からなる民間非営利団体(NPO法人、社団法人など)という3つに大別できる。このように、日本のサードセクターは三重構造をなしていることがわかる。
ところで、サードセクターにおける各団体は人員、財源、政治的正当性などのリソースをめぐって競合していると想定される。それならば、先行して存在する団体はリソースの獲得において優位な位置を占めており、後続の団体は不利な状況の中で組織を成長させなければならないだろう。そこで、設立時期と団体のリソースとの関連について多重対応分析を行った(図2参照)。図から、横軸(第1主成分)に沿って、右から左にいくほど会員や収入、および、行政との関係を表す諸変数が大きくなっており、組織リソースと政治的リソースをともに表していると考えられる。また、図では縦軸(第2主成分)に沿って、下から上にいくほど設立時期が新しい傾向がみられる。
そして、総スタッフ数や総収入額が大きな団体、あるいは行政の支援で設立された団体、行政からの指導・監督が厳しい団体などが図の左下部にプロットされている。すなわち、設立年が古く、行政との関係が密接な団体ほど多くの組織リソースを保有しているのである。一方で、活動目的が構成員志向の団体は図の右下部に位置しており、さらに、協同組合と農林水産業分野の団体は図の右下に大きく外れている。これらの団体は、設立時期は古いものの、あまり多くのリソースを保有していない。図の上部には、96〜05年、06年〜といった設立時期の他に、NPO法人、学術、教育を目的とする団体、自発的に設立された団体が位置しており、近年になって多く設立された新しい団体の特徴を示している。ここから、設立時期の三重構造に応じて、リソースの分布も異なることがわかる。
以上の結果から、1990年代以降の制度改革を経て多くの民間非営利団体が誕生し、現在の日本のサードセクターにおいて大きな存在感を示していることがわかる。今後、これらの団体が成長するとともに、日本のサードセクターがどのように変容するのかは注目に値する。
凡例
―団体の種別(〇印)―
・設立時期:戦前、46〜55年、56〜65年、66〜75年、76〜85年、86〜95年、96〜05年、2006年〜
・法人格:社団(社団法人)、財団(財団法人)、医法人(医療法人)、NPO(NPO法人)、福法人(社会福祉法人)、協組(協同組合)、他法人(その他の法人)
・活動分野:福祉、学術、経済、医療、教育、地域、農水、構成員、他分野(その他の分野)
・設立の経緯:自発的、行政(行政の支援)、企業(企業の支援)、先行団体(先行団体の支援)、他経緯(その他の経緯)
―組織内リソース(□印)―
・全スタッフ数:会員1(2人以下)、会員2(3〜10人)、会員3(11〜30人)、会員4(31人〜)
・総収入額:収入1(〜500万円)、収入2(500〜3000万円)、収入3(3000万円〜1億円)、収入4(1億円〜)
―政治的リソース(△印)―
・行政関連収入の割合:行収1(0%)、行収2(50%未満)、行収3(50%以上)
・行政の指導監督:監督厳、監督緩
・公的資金によるサービス提供の割合:公サ有(1%以上)、公サ無(0%)
・行政接触:接触有、接触無