ノンテクニカルサマリー

アウトソーシングと環境行動―日本企業の分析

執筆者 Matthew A. COLE (バーミンガム大学)/Robert R.J. ELLIOTT (バーミンガム大学)/大久保 敏弘 (慶応義塾大学)/Liyun ZHANG (バーミンガム大学)
研究プロジェクト 国際化・情報化新時代と地域経済
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

地域経済プログラム (第四期:2016〜2019年度)
「国際化・情報化新時代と地域経済」プロジェクト

地球温暖化が深刻になっている今日、国際的なレベルでの環境規制が必要になっている。とくに、経済のグローバル化による企業活動の国際化が、環境対策・汚染対策にどのような影響を与えているか、つまり自由貿易体制や自由な投資と地球環境問題とは整合的であるかどうかは、重要な問題である。先行研究では、輸出企業ほど、また海外直接投資をする企業ほど汚染集約度(生産1単位当たりのCO₂排出)が、低いことが実証的に明らかになってきている。

しかしながら、近年の企業行動でより頻繁に行われているのはアウトソーシング(業務の外部委託)である。国際間でも国内でも企業間で多くの分野でアウトソーシングが行われている。そこで本論文では、アウトソーシングと環境行動の関係を明らかにした。本分析では汚染集約度とアウトソーシング(国内外アウトソーシング、さらには製造部門・非製造部門のアウトソーシング)の関係をマッチングの手法(Propensity Score Matching)を用いて推計した。結果、アウトソーシングをすることにより汚染集約度が低減することが明らかになった。下表のように、製造アウトソーシングをすることで汚染集約度が5%低下し、さらに開始の1年後、2年後と徐々に有意に低下することが分かった。しかしその一方で、輸出の開始についても同様の推計をしたが、汚染集約度には有意な影響を与えていないことが明らかになった。

日本国内ではElliott and Okubo(2016)が示したように戦後、非常に厳しい環境規制がとられてきており、規制は自治体レベルでも独自に課され、大企業と地域の間により厳しい地域汚染防止協定も結ばれている。総じて大企業に対する規制は厳しいといえる。ここで注意しなければならないのは、現に国内アウトソーシングで汚染集約度の大きな低下がみられるのは汚染防止投資を活発化させたためではなく、汚染集約的な工程を一部アウトソーシングしたためであり、特に産廃業者や専門の処理業者への委託による可能性が高い。近年の規制の厳格化やコンプライアンスの徹底を背景に、専門の処理業者に汚染集約的な工程を外部委託することで、環境対策における分業が効率的に行われる可能性がある一方で、単なる汚染の移転になっている可能性もある。このため、今後アウトソーシング先における検証も必要となるだろう。

表:アウトソーシングによる企業の汚染集約度(CO₂集約度)の変化 (PSM-DiD estimates)
s=0 s=1 s=2
Gaussian Kernel matching
ATT -0.051**
(0.026)
-0.066*
(0.034)
-0.095*
(0.052)
N(T) 173 113 54
N(C) 1060 619 263
Radius matching
ATT -0.052*
(0.027)
-0.062*
(0.036)
-0.095*
(0.054)
N(T) 165 105 51
N(C) 848 484 202
(*1)アウトソーシングの開始時点をs=0、1年後をs=1、2年後をs=2としており、ATTは平均処置効果を表す。つまりアウトソーシングによる汚染集約度の変化を示している。
(*2)Gaussian Kernel matchingとRadius matchingの2つのマッチング方法を用いて推計しており、マッチングの結果、N(T)はアウトソーシングを開始した企業数、N(C)は非アウトソーシングの企業数を示している。
(*3)**は5 %有意、*は10%有意を示している。
参考文献
  • Elliott, R.J.R. and Okubo, T. (2016), Ecological Modernization in Japan: The Role of Interest Rate Subsidies and Voluntary Pollution Control Agreements, Asian Economic Papers, 3(15), 66-88.