執筆者 | 庄司 啓史 (衆議院) |
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研究プロジェクト | 財政再建策のコストとベネフィット |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
社会保障・税財政プログラム (第三期:2011〜2015年度)
「財政再建策のコストとベネフィット」プロジェクト
問題意識
金融政策には通貨発行益や景気刺激効果というベネフィットがある一方で、出口においては保有国債評価損、当座預金に対する利払いあるいは準備預金率の引き上げといったコストが発生する。特に異次元緩和政策によるマネタリーベースの拡大や保有国債の残存年限の長期化はそのコストを上昇させるリスクがある。そこで本稿では、将来的にコストが発生する金融政策がベネフィットである設備投資にどのような影響を与えているのかを検証するものである。
結果の要約
分析結果を要約すると、(1)金融政策のうち政策金利の引き上げは企業の設備投資を抑制する、(2)純粋な量的緩和部分については効果が限定的、(3)ただし、量的緩和が期待インフレ率を上昇させることによる実質金利に作用する場合は設備投資刺激効果を持ち得る、(4)多くの負債を抱える企業および1999年のゼロ金利政策導入以降は、量的緩和は企業の負債を低下させる効果を持つことで設備投資を刺激する効果は限定的となり、企業間や時期によって金融政策の波及効果が異なる可能性がある、(5)潜在成長率の低下は企業の設備投資需要を低下させる可能性が示唆された――となる。
政策的インプリケーション
量的緩和政策はその効果が限定的となることから、期待インフレ率に対する影響を慎重に判断しつつ将来のコストを抑えるためにできる限り抑制的であるべきである。また、金融政策による景気刺激ではなく潜在成長率の引き上げこそが重要であり、政府の成長戦略による規制緩和などの構造改革で生産性を向上させることが大事となる。