執筆者 | 北村 利彦 (九州大学)/馬奈木 俊介 (ファカルティフェロー) |
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研究プロジェクト | 原発事故後の経済状況及び産業構造変化がエネルギー需給に与える影響 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
新しい産業政策プログラム (第三期:2011~2015年度)
「原発事故後の経済状況及び産業構造変化がエネルギー需給に与える影響」プロジェクト
自家発電は事業所において電気を発電する設備であるが、熱を同時に供給することができるコージェネレーションは、エネルギー効率が高いシステムで産業用を中心に導入が進んでいる。コージェネレーション導入量は1980年代から継続して増加していたが、リーマンショックの影響のためか増加がにぶっていた。しかし東日本大震災後、再び導入台数は上昇傾向を示している。
本研究では、価格が1%変動することにより需要がどのくらい変化するかを表す指標である価格弾力性を評価した。価格弾力性はオイルショック以降の燃料代替性検討や炭素税導入効果の検討に利用された重要な指標の1つである。これまでエネルギー需要全体の分析は行われているが、自家発電力も含めた電気需要に焦点を絞った研究は行われてこなかった。
電気料金が上がれば自家発電力は増えるのか
自家発電はコストを削減できるため購入電力の価格上昇時に自家発電力が増えると考えられた。しかし、自家発燃料の購入電力に対する交叉価格弾力性がほとんど全て負値であったことから、電気料金が上がることにより自家発電力が増えないことが示唆された。つまり自家発電導入は通常からエネルギー効率を高く運転することでエネルギーコスト低減に有効であるが、東日本大震災以降の電気料金値上げを緩和するような通常の運転を超えた購入電力代替効果は見られない可能性がある。
炭素税の効果はあるのか
自家発電は電気を電力会社から購入し蒸気や温水をボイラーでつくるよりも効率的で安価であることから、自家発燃料の価格がある程度上昇しても自家発燃料の需要には影響が出ないと予想していた。しかし価格弾力性が有意であったことから、炭素税による自家発燃料価格上昇は需要抑制効果を持つことが示唆された。
注)( )内の標準誤差はサンプル平均でのシミュレーションによる値。
有意水準 *, **,と ***は、それぞれ10%, 5%, and 1%レベル。