ノンテクニカルサマリー

組織改革は生産性に影響するか?

執筆者 川上 淳之 (帝京大学)/淺羽 茂 (早稲田大学)
研究プロジェクト 日本における無形資産の研究:国際比較及び公的部門の計測を中心として
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

産業・企業生産性向上プログラム (第三期:2011~2015年度)
「日本における無形資産の研究:国際比較及び公的部門の計測を中心として」プロジェクト

本稿では、組織改革を行った企業を特定し、傾向スコアマッチングを行って類似の比較対象企業を選び、それぞれ組織改革時の生産性とn年後(n=1~5)の生産性の変化を計算し、両者の間で生産性の変化に差があるかどうかを分析した。

一般的に組織改革を行った企業全体についてみると、3期目(変革後3年目)において組織改革の効果は確認され、業績が悪化していない状況で組織改革を行っている企業は2期目から4期目にかけて生産性の上昇がみられた(図1を参照)。

図1:TFPに与える組織改革の影響
図1:TFPに与える組織改革の影響
図2:TFPに与える組織改革の影響(非業績悪化要因)
図2:TFPに与える組織改革の影響(非業績悪化要因)

それに加え、業績悪化によらない組織改革は2期目からの高い効果があらわれる(図2)。ボトムアップによる組織改革でより高い効果がみられた点において、常に組織改革の必要性を認識している必要があることや、改革には従業員の賛同や協力が必要であることが示唆される。

この結果から政策的インプリケーションを導くと、以下の2つが考えられる。1つは、組織改革が生産性に正の効果をもたらすのは変革後一定期間を経た後であり、とくに業績が悪化している企業にとっては、投資負担が重いために組織改革に着手できないかもしれない。ゆえに、組織改革に要する投資(教育投資、IT投資など)に対する政策的な支援は、企業が変革を実施させ、生産性を向上するために有効であろう。

2つ目は、組織改革にかかわるデータの整備である。いかなる組織改革が生産性向上に大きなインパクトを持っているかについて、我々は十分な理解を得ていない。今後も継続して企業の組織改革に関するデータを収集することによって、組織改革と企業の生産性向上との関係に関する理解が深まる。効果的な組織改革のより具体的な内容がわかれば、1つ目の政策的含意とも関係し、効果的な組織改革に向けた投資に支援を集中するなど、有効な施策がとれるであろう。