ノンテクニカルサマリー

中国の鉄道物流構造変化に関する実証分析

執筆者 孟 健軍 (客員研究員)/張 紅咏 (研究員)
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)

本稿の目的

広大な国土を有する中国では、広域レベルの物流基本構造および物流体系形成の最も重要なファクターの1つは鉄道物流である。中国の鉄道建設や鉄道網の拡張、および鉄道物流効率の向上や鉄道運輸管理体制改革は鉄道物流構造変化に有利な条件を提供している一方、経済体制の転換、経済の持続発展や地域の経済構造変化は国内経済資源の流動化をもたらし、鉄道物流構造変化に大きく寄与している。本稿は、このような鉄道物流構造変化の重要性に関心を寄せ、1990年から2012年までの鉄道貨物輸送量のデータをベースにして重力モデルを応用する実証分析を行い、全国レベルの鉄道物流構造変化と市場化による地域経済一体化およびその要因について解明することが目的である。

分析結果

鉄道貨物輸送量は改革開放期の1990年の15億681万トンから2002年の20億4956万トン、さらに2012年の39億438万トンまで大幅に増加した。鉄道貨物輸送量の大幅な増加は、各地域の経済発展による製造業の拡大、大規模な都市化によるインフラ建設およびエネルギー資源の需給上昇によってもたらされていると思われる。本稿では鉄道貨物輸送量のパネルデータを用いて、国内鉄道網により連接している28の省・直轄市・自治区の鉄道物流構造変化を分析する。しかし、鉄道貨物輸送量のなかで、石炭輸送量は採掘地が偏在しているため、圧倒的な輸送シェアを占めている。それによって、全貨物輸送量、石炭輸送量および石炭以外輸送量の3つのパネルデータ集計に分けてそれぞれを推定している。付表はその推定結果をまとめたものである。

全貨物輸送量は統計的な有意を見る限り、鉄道営業距離と負の相関関係にある。また、全貨物輸送量は発送地のGDP規模と正の相関関係が見られる一方、到着地のGDP規模と負の相関関係にある。さらに、全貨物輸送量は域内ダミーを入れると、負の相関関係にあり、これは地域内部より地域間の全貨物輸送量が増加していると考えられる。全貨物輸送量は発送地の第二次産業との間に正の相関関係にある一方、到着地の第二次産業との間に強い正の相関関係が示されている。国有経済との関係をみてみると、発送地と到着地の両方とも正の相関関係が見られるが、到着地の国有経済に強く影響されている。

石炭輸送量は鉄道営業距離と強い負の相関関係にあると同時に、発送地のGDP規模と正の相関関係が見られる一方、到着地のGDP規模と強い負の相関関係が示されている。域内ダミーを入れると、石炭輸送量との相関関係は負である。石炭輸送量は全貨物輸送量の推定結果にほぼ相似している傾向が示されている。また、石炭輸送量は発送地の第二次産業との間に有意な結果が得られないが、到着地の第二次産業との間に強い正の相関関係が示されている。そして、石炭輸送量は国有経済との関係をみると、発送地と到着地の両方とも正の相関関係が見られている。

石炭以外輸送量は地域間の鉄道営業距離と負の相関関係にある。また、石炭以外輸送量は、発送地のGDP規模と有意な結果が得られないが、到着地のGDP規模と負の相関関係にある。域内ダミーを入れると、石炭以外輸送量との相関関係は負である。さらに、石炭以外輸送量は発送地の第二次産業との間に正の相関関係にある一方、到着地の第二次産業の割合との間に強い正の相関関係が示されている。最後に、石炭以外輸送量は到着地の国有経済比率に強く影響されている。

結論

本稿の結論として、中国の鉄道物流構造変化は、地域間の物理距離に影響されているものの、各地域の経済成長に伴い、長距離移動が開始し、つまり地域経済一体化に向かっている。とりわけ、到着地の第二次産業の急速な成長によって需要面から鉄道物流構造変化は著しくなっている。しかし、このような鉄道物流構造変化は依然として各地域の国有経済の影響下にあることも見逃せないと思われる。

付表
従属変数:(1)
総輸送量
(2)
石炭輸送量
(3)
石炭以外輸送量
説明変数:
鉄道路線長の対数値--
発送地GDPの対数値有意性ない
到着地GDPの対数値
域内ダミー
発送地GDPに占める第二次産業の割合有意性ない
到着地GDPに占める第二次産業の割合++++++
発送地の国有経済比率有意性ない
到着地の国有経済比率++