執筆者 |
Selahattin IMROHOROGLU (南カリフォルニア大学) 北尾 早霧 (慶應大学) 山田 知明 (明治大学) |
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研究プロジェクト | 高齢化等の構造変化が進展する下での金融財政政策のあり方 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
社会保障・税財政プログラム (第三期:2011~2015年度)
「高齢化等の構造変化が進展する下での金融財政政策のあり方」プロジェクト
急速に進行する少子高齢化により、年金、医療保険などの政府支出が増加する一方、人口と労働力の減少により税収は低下する。本論文では外国人労働者を受け入れることにより財政収支がどの程度改善し得るかを、ミクロベースの動学的一般均衡マクロ経済モデルを用いて分析する。
論文においては受け入れる外国人労働者の生産性(賃金水準)、受け入れ人数、滞在期間などさまざまな仮定を検討する。比較のベースとなるベンチマークモデルにおいては、現行の社会保障、財政制度を維持するために各年における財政不均衡を消費税の増減によって賄うものとして計算を行った。この場合、消費税率は現行の8%から2050年には29%、ピークとなる2070年前後には36%に達し、今世紀末まで35%を超える高水準で推移する。
米国移民法が規定するH-1ビザ・プログラムのように、特定の技術をもった外国人労働者を毎年一定数、一定期間に限り受け入れた場合の必要消費税率の変化は以下のとおりとなる。
ベンチマーク | ケース1 | ケース2 | ケース3 | |
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2020年 | 10.2% | 9.7% | 9.2% | 5.1% |
2050年 | 28.9% | 27.6% | 26.3% | 20.6% |
2070年 | 36.4% | 34.3% | 32.4% | 26.2% |
2100年 | 36.0% | 33.0% | 30.2% | 25.5% |
ケース1および2においては毎年20万人の外国人労働者を10年の滞在を前提として受け入れると仮定。ケース1においては外国人労働者が各年齢において日本人平均賃金の約半分に相当する賃金を、ケース2においては日本人と同じ平均賃金を稼ぐものと仮定する。日本に滞在する外国人労働者は10年を過ぎた時点で200万人、平均年齢40歳とする。
ケース3は、さらに大胆な政策で全労働者に占める外国人比率をアメリカと同等の16.4%にまで上昇させると仮定、賃金についてはケース2と同様日本人平均賃金と同じとする。
ケース1、2の場合には2050年には消費税にして1~3%、ピークとなる2070年には2~4%程度の財政負担の軽減につながる。外国人労働者の受け入れは所得税収の増加、労働力と生産の上昇によりプラスの経済効果が期待できるものの、大きな財政・経済効果を望むのであれば相当に大規模な受け入れを実行する必要があることが明らかとなった。外国人労働者受け入れにより財政問題がすべて解決するというのは(米国におけるような規模で受け入れをしない限り)困難であるが、他の社会保障政策改革との組合せにより総合的な財政問題解決のための1つの政策選択肢となるであろう。