執筆者 | 石田 良 (財務省財務総合政策研究所)/小黒 一正 (コンサルティングフェロー)/安岡 匡也 (関西学院大学) |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
その他特別な研究成果 (所属プロジェクトなし)
少子化問題に直面している日本をはじめとする国々では、人口密度の高い地域ほど、低い出生率となる傾向が確認されるが(図表)、抜本的な育児支援政策を実施することで人口密度の高い地域でも育児と仕事の両立が可能となることを通じて出生率を引き上げ、もって地域間の出生率格差を縮めることが可能か否かという考察を深めることは、現在政府が進める人口減少策や東京一極集中是正といった地方創生策との関係でも重要な分析テーマである。
そこで、本稿では、人口移動や地価を組み込んだ2地域OLGの簡単な理論モデルを構築し、人口密度や保育サービスが出生率に及ぼす影響を分析している。
その結果、人口密度の増加に伴う混雑コスト(例:交通渋滞)が存在する場合、各地域の人口密度が高まると、その地域の出生率は低下するが、当該地域の保育サービス水準を引き上げることで育児の時間的コストを低下させると、人口密度の増加が出生率に及ぼす影響を低減させることができる可能性があることが明らかとなった。
また、人口規模が生産性に及ぼす効果が一定値未満のとき、保育サービス水準の引き上げは人口密度の相対比率を高める方向に働くが、人口規模が生産性に及ぼす効果が一定値を超えるとき、保育サービス改革で育児の時間コストの相対比率が低下すると、人口密度の相対比率は低下する可能性なども明らかとなった。
以上の結果は、東京一極集中の下でも、保育サービス水準の引き上げにより、育児と仕事の両立が可能となることを通じて人口密度の高い地域の出生率を引き上げることができる可能性などの政策的含意を示唆する。